先日、宮城県岩沼市で開催されたJOCA(青年海外協力協会)東北のオープニングセレモニーについて、全国各地でまちづくりに取り組む方々のご参考になればと思い、別の視点からご報告します。

当日のセレモニー開始前、メイン会場となる講堂(吹き抜けの空間です)に入った JOCAの雄谷会長からダメ出しがありました。ますは壇上のバックに掲げられた看板(「JOCA東北 オープニングセレモニー」)。続いて、司会者の開会の言葉遣い(「本日はご多忙の折、ご参列くださいまして、誠にありがとうございます」)。

その日の午前中、施設に訪れた方々に話を聞くと、「いったいどんな建物ができるのか、前から気になっていた」とのこと。そして、ここで働いているスタッフの多くが青年海外協力隊経験者で、アジア、アフリカ、中南米など世界各国でボランティア活動をしてきた経験をもっているというと、そろって「へえ、そんな方々が岩沼に来ているのですか」と驚き、関心をもってくれました。

そうした方々の驚きや関心に応えるような空間のデザインに、セレモニー会場はなっていたか。青年海外協力隊経験者が地域の方々とともに、若者から高齢者、お父さん、お母さん、子ども、障害のある人、外国籍の人などが日常的に交流できる「ごちゃまぜ」のコミュニティをつくることを伝える場として、一般的なセレモニーでよく使われる看板を背に、形式的な開会の辞を受けて、 登壇者が一段高いところから語るのが相応しいのか。講堂では映画会も開催する予定で、その時は「岩沼ピカデリー」と名を変えて、大人向けの作品も上映していきます(標記の写真。ちなみに作品は(仮))。であれば、なおさらデザインを考えるべきではないか――雄谷会長から出された異議はそういうものでした。

「そういう違和感を抱いた人はいたわけでしょ。あれ、おかしいな、と。でも『ここまで来てしまったし』『いまさら面倒くさいやつと思われたくない』と飲み込んでしまう。それはその場に『心理的安全性』が働いていないから」

心理的安全性については下記のブログをお読みください。

https://is.gd/Oc5EpG

ちなみに2018年8月に東京から駒ケ根市に移転したJOCA本部のオープンセレモニーでのバックは落書きがたくさんの黒板でした。

JOCA東北の内部のデザインを検討していた際、室内に「ここは保育園、あそこは温泉、トイレはこちら」といったサインをつける提案をしたところ、雄谷会長から反対されました。

「君たちの家に『こっちは台所、あっちはお風呂』なんて案内板ある? ここは地域の人たちが日常的に訪れる場であって、初めての人は、なかをウロウロしながら探せばいいんだよ。そうするとここがどういうところかがわかってくるし、『トイレはどこですか?』の一言から会話が生まれるかもしれないでしょ」

この場所はどういうところで、何を目指しているのか。それを押えていれば、空間のデザイン、そして参加者の服装も自ずと決まってくる。セレモニーの冒頭、司会者が事前練習とは打って変わって元気よく「みなさん、こんにちはー!」と声をかけると、会場はすっと和らぎました。