7月28日(水)に開催した茨城県常総市と生涯活躍のまちアドバイザーのオンライン勉強会のテーマは「空き家問題」。同市移住定住推進室 住宅・空家対策係の伊藤和芳さんより「当市で運営している空家等バンク登録物件を利用したいという利用者登録件数は伸びているものの、登録物件数が少ない」「管理不全の空き家が増えていることから、当市は所有者等を調査し、適正管理する旨の指導通知を発送しているが、その通知に反応する所有者は少なく、結局、管理是正を行わずそのままの状態になってしまっている」「空家等バンク以外に、空き家を利活用する術、たとえば移住定住を推進するための施策などがなかなか思いつかない」というご相談を受けたのがきっかけです。

そこで当協議会は空き家活用や空き家バンクの運営で先進的な取組をされている鳥取県南部町、長野県佐久市の担当者の方に講師をお願いしました。 南部町からは企画政策課主事の吉村友良さんより、同町のまちづくり会社である、なんぶ里山デザイン機構が取り組むスキーム(町内にある7つの地域振興協議会から紹介された空き家を改修して移住者に賃貸住宅として提供)について、佐久市移住交流推進課の森下慶汰さんからは、佐久市が連絡調整を行い利用者と家主が契約を結ぶ直接型、長野県宅建協会が利用者・家主間の交渉や契約を担う間接型と2つの方式をもつ空き家バンクの実績ならびに現状の課題から将来の展望について、話をしていただきました。

また、全国の空家等を管理・運営し、年間一定額を支払う会員はどこでも住み放題のサブスクリプションサービスを提供している(株)ADDressの取締役の桜井里子さん、 同社物件開発ディレクターの坪山励さんより、地域の特性と物件に合わせたリノベーションの例を紹介いただきました。 いわゆる「観光以上、移住未満」という関係人口、交流人口の拡大に資する事業といえるでしょう。 その際に重要な役割を担うのが「家守」で、そこに住まう人と地域の住民とのつないでくれる存在です(桜井さんご自身も自社物件「二子玉川邸」の家守とのこと)。

(出所)『生涯活躍のまちアドバイザー研修テキスト』内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局

意見交換の場では、市浦ハウジング&プランニング東京支店の仁科力さんがファシリテーターとして議論をリード。「登録物件の少なさ」については、 空き家のそもそもの母数や規模が小さいことから他の市町村との広域連携で取り組む必要があること、自治会連携、業界団体連携、NPO、定住協力員と協力して空き家の掘り起こしを行うことなど、「管理不全の空き家に対する効果的な対策が不明確」については、 特定空き家への指定による助言・指導、勧告、命令、行政代執行、相続財産管理制度による相続財産管理人選任の申し立てといった相続税放棄対策など、空家等バンク以外に「空き家を利活用する術」については、 ゲストハウスにする、地域の居場所、アトリエ、カフェ、子ども食堂などの公益的な利用を促進する、首都圏の住民を対象とした空き家改修のためのDIY 教室ツアーを実施するといった提案をされました。

オブザーバーとして参加いただいている内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局参事官補佐の大河原竜さんからは、空き家問題は全国の地域が直面している課題であり、これを機に常総市が生涯活躍のまちを通して解決に取り組み、空き家問題解決の先行事例になってほしいという期待も寄せていただきました。

参加者からも好評で、生涯活躍のまち「空き家問題」分科会のような場をつくるといった展開も考えており、ご関心のある自治体、事業者の方には広く参加を呼びかけていきたいと思います。