2016年に日本で翻訳出版された『LIFE SHFT 人生100年時代の人生戦略』は、リンダ・グラットン、アンドリュー・スコットという英国の経営学者と経済学者によるもので、「過去200年間、人間の平均寿命は伸び続けており、2107年には主な先進国では半数以上が100歳よりも長生きする」という予測を踏まえ、80歳程度の平均寿命を前提に〈教育〉〈仕事〉〈引退〉の3段階で考えられてきたライフコースを抜本的に考え直されなければならないと提言しています。

今年度、大阪と東京で開催した「おおいたフォーラム」にて基調講演をしてくださったノンフィクション作家の久田恵さんは、冒頭、同書について触れて、以下のようなデータを紹介してくださいました。

久田さんは「日本では『2025年問題』が言われています。同年に人口の多い団塊の世代がすべて後期高齢者になることで医療・介護需要が高まっていき、病院や介護施設がパンクしてしまうのではないかというものです。でも、そうでしょうか? 統計データをみると、『75歳以上で介護保険の給付を受けていない人は77%』に上っています。すなわち、4人に3人以上は給付を受けていないのです。また、『85歳以上で認知症の方は27.3%』と認知症の割合は4人に1人強に過ぎません」とおっしゃっています。

また「『地方には仕事がない、だから移住はできない、Uターンできない』とはよく言われるですが、地域には人手が足りなくて困っている仕事がたくさんあります。それを掘り起こし、小さな生業をいくつかやりながら、お金を稼ぐスタイルを今後はもっと増やしていけばいい」。そして、 移住についてももっと柔軟に考えたらとして、「人生100年時代には、第3、第4のステージがあるのですから、『移住』というよりも『住み替え』という軽い感覚で考えた方がいいのではないでしょうか」とおっしゃっておられました。

ライフシフトはマルチステージ。多様な生き方を実現していく時代をあらためて予感しています。