サードプレイスとは、家庭がファーストプレイス、職場がセカンドプレイスだとすれば、それ以外の居場所のこと。そして、それは「The Great Good Place」であるべきだ。著者であるアメリカの都市社会学者であるレイ・オルデンバーグが1989年に刊行した本です。日本では2013年に翻訳書が出版されました。

オルデンバーグはサードプレイスのあり方をドイツ系アメリカ人のラガービールガーデン、イギリスのパブ、フランスのカフェ、あるいはオーストリアに見られる古典的なコーヒーハウスなどを例に語ります。そこでは家族からも会社からも解放され、誰もが平等になれる場所。特段のルールはないが、そこでもふるまい方、いわば暗黙のエチケットはある。それを守れば、みんなが居心地のよい空間なのです。

本書を読むと、アメリカの人々の暮らし方はヨーロッパよりも日本のそれに近いのではないかと思えてきます。たとえば、インフォーマルな公共生活の乏しさ。中流層にはコミュニティとのつながりをもたない家々が多いので、わざわざそういう機会をつくらなくてはいけない。消費にお金がかかる。その点、パブやカフェ(フランスでは成人32人あたり1軒のカフェがあるそうです)は地域にさりげなくあって、そこには顔見知りがいて、他愛のない会話ができる。会社の飲み会とも違うのです。

地域における居場所と役割を「サードプライス」という観点からみると、可能性が広がっていくのではないでしょうか。

自分に「とびきり居心地よい場所」はあるか? そんな問いからまちづくりを始めてみるのもいいかもしれません。