12月29日付『朝日新聞』に法政大学・朝日新聞共催の朝日教育会議「多様性輝くグローバル社会に」の基調講演(田中優子・法政大学総長)、プレゼンテーション(元陸上選手・為末大さん、社会活動家・湯浅誠さん)、上記3人によるパネルディスカッションの様子が掲載されました。

ここでは湯浅さんの言葉を紹介します。彼は多様性には光と影があり、安易な礼賛は危険と言います。「例えば、外国籍の人がコンビニのレジの向こうにいる分には『違っていい』と言えるけど、自分の家の隣に引っ越してきたらどうでしょう。離れられない場所でこそ、配慮し合うインクルーシブ・ダイバーシティが試されます」。湯浅さんによれば、多様性を認め合っている状態というのは、実はつながりにくくて、放っておくと分断と細分化を招くといいます。

「みんなちがって、みんないい」からさらに一歩行くにはどうすればいいか。湯浅さんは、多様な人とつながろうとする意思をもって、そのつながりを積み重ねていくことの大切さも指摘します。

「社会的弱者」という言葉がありますが、そういう目線もそっと外して、同じ目線になってみる。湯浅さんは著書『反貧困』で「すべり台社会」という表現を使っています。今、私たちの暮らす世の中では、どんな立場にいる人でも、ちょっと足を滑らせると、一気に貧困へと陥ってしまいます。自分の日常と路上生活が陸続きであると思えば、自ずと意識と行動は決まってくるでしょう。

湯浅さんは最後に「相手は障害者かもしれないし、高齢者かもしれないし、外国籍かもしれない。誰であっても、歩くペースを合わせますよね。まさに、ここに芽があるんです。こうしたことを社会が積み重ねていくこと自体が、グローバル化なのだと思います」

グローバル化は世界を股にかけて行動することにだけあるのではありません。実は私たち一人ひとりの足元で進んでいるのです。