本日、大和ハウス工業営業本部の瓜坂和昭・ヒューマン・ケア事業推進部長よりお話をお聞きしました。同社が2014年から本格的に取り組んでいる横浜市栄区にある「上郷ネオポリス」の再生事業についてです。

 テレビドラマ『岸辺のアルバム』という作品は、50代以上の方ならご存じの方が多いと思います。山田太一さんの脚本、昨年亡くなった八千草薫さんが主演され、1977(昭和52)年に放映されたこのホームドラマは、1974(昭和49)年に起きた多摩川の水害を題材にしています。ジャニス・イアンの主題歌『ウィル・ユー・ダンス』を覚えている方もいらっしゃるでしょう。

「上郷ネオポリス」ができたのはまさに1974年。多くのサラリーマンが夢のマイホームを手にした地域は高齢化率が50%。住民のなかにも「自分たちが死んだ後はどうなってもいい」という空気があるなか、大和ハウスが再び地域に入り、最初は「今ころ何をしきたんだ」「どうせ住み替えやリフォームを進めるんだろ」という冷ややかな目も浴びながら、それでも企業の責任として、自分たちがつくったニュータウンを生き返らせたいという思いを理解してもらって話し合いを続け、昨年にはバスターミナルの一部に、ローソンと組んで住民の方々が気軽に集まれる場 「野七里(のしちり)テラス」 をオープンしました。

 これから目指すのは、ダウンサイジングによるまちの魅力づくり。たとえば、子育てを終えた夫婦はいまの持ち家を売る、あるいは貸して、 「上郷ネオポリス 」の2人用の平屋の家に住み替える。これまで住んでいたアパートが狭くなった若い夫婦であれば、古い家をリノベーションして、子育て期間にあたる15~20年ほどを定期借家で住む。 広い家をひとり暮らしになった高齢者向けに5~6人用のシェアハウスに転用する。閉校した校舎の教室をコワーキングスペースとして使う。戸建て住宅を分散型のサービス付き高齢者向け住宅にし、 学校の教室をサービステーションとして見守り機能と生活相談を行えば、自宅に居ながらにして見守りや生活相談のサービスも受けられる感覚になるし、空き家をグループホームや小規模多機能すれば、 介護が必要になったときでも安心でしょう。

 外見は同じでも、いまあるストックの機能を変えていくことで、住民のニーズに対応し、いままでどおり「上郷ネオポリス」に住み続けるためのまちづくりなのです。

 話は住民のしごとづくりにも及び、まちづくりには総合力が求められることをあらためて認識しました。瓜坂部長は、

「 当社はまちづくりを通してSDGsを実践していくという方針を掲げています。環境に優しく、高齢者の活躍の機会の提供し、子育て制度の充実をすることなども合わせて事業を進めていきたい。そういう意味ではまちづくりに関わることが会社の価値を高めていることになるわけです」ともおっしゃっています。

インタビューは『生涯活躍のまち』10号に掲載予定です。 お楽しみに。