月刊誌『世界』8月号は「サピエンス減少--人類史の折り返し点」という特集を組み、現状と論点、ジェンダー、ゼロ経済成長といった切り口からの論考を掲載しています。

そのなかのひとつ「いま東アジアで何が起きているのか--結婚しない若者」(日本経済新聞記者・村山宏氏)は、韓国、台湾、香港の人口がすでに自然減、中国も2019年に14憶人をピークに減り始めていることを指摘。経済を専門とする著者は、その要因のひとつとして「お一人様経済」の勃興を挙げています。

東アジアでも核家族化が進み、結婚と同時に親と離れて新居に住むことが普通になった一方、住宅取得費、教育費の高騰が結婚や出産の妨げになっているというのです。中国でも2000年ごろまでは全人口の6~7割が農村部に住んでいたのが、2020年までに都市部の人口が6割を超えたとのこと。これにともない、同国での一人暮らしの成人は7,700万人に上った(2018年)といわれており、合計特殊出生率(1人の女性が15~49歳までに産む子供の数の平均)では、日本が東アジアで最も高くなっているのが現状です(日本:1.34%、韓国:0.84%、台湾:0.99%、中国:1.3%。2020年時点)。

『2050年 世界人口大減少』(ダリル・ブッカー著/文藝春秋)は、現在76億人の世界人口は21世紀いっぱい増え続けて110億人ほどに達し、2100年代になって初めて横ばいになるという国連の推計を否定しています。都市化や女子教育の普及による女性の地位の向上などで、1人の女性が産む子どもの数が減る傾向はいまや世界中でみられるというのです。

第1次産業が主ではない都市生活では子どもがいても家庭の労働力の足しにはなりません。むしろ子どもはお金がかかって負債となる。女性の地位が上がれば、男性の言いなりにはならない人生を送ろうと、自分を向上させることに資源をつぎ込む。そのため子どもの数は減るというのが同書の見方であり、2050年ころに世界人口は90億人くらいでピークを迎え、それから減っていくと予測しています。

とすれば、世界でどこの国より早く少子高齢化に突入した日本で取り組んできた、持続可能なコミュニティをつくっていくための「生涯活躍のまち」は世界にとってのひとつの指針になるのではないでしょうか。

そうしたソフトを日本から提供していくことも想定しながら、私たちが日々活動していくことができれば、日本は地域づくりという分野で世界のトップランナーになれると思います。