内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の資料より。

地方創生や地域経営、地方議会の動向などをいち早く伝える専門誌『日経グローカル』(隔週発行)2020年6月15日号に「『生涯活躍のまち』再始動」という記事が掲載されました。「『全世代化』で推進意向の自治体増 専門人材育成や広域連携がカギ」というサブタイトルで、2015年に始まった地方創生施策「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が当初に掲げた高齢者の地方移住から、若者から高齢者までのすべての世代が活躍できるコミュニティづくりに目標を転換したところ、2020年2月に行った調査で推進意向自治体が開始当初よりも7割増の366になった理由を説明しています。

2015年に実施された自治体向けの「生涯活躍のまち推進意向」の第1回調査では、「推進意向あり」と回答した自治体が202でした。第2回には263と伸びたものの、第3回からは減少に転じ、第5回には216にまで落ち込みました。一方、「推進意向なし」と回答した自治体は第1回目は199だったのが、第2回以降は大幅に増加し、第5回は571にまで達しました。

「取り組み意向がない」「今後検討する」と回答した自治体の主な理由は「若者世帯の移住を優先する」「財政負担が増加する」「人的財政的余裕がない」。それに対し、政府は昨年末に発表した「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、「全世代・全員活躍型」という新しいコンセプトに加えて、若者、中高齢者、移住者、地元住民などが構成員となる「ごちゃまぜ」という表現を取り入れました。そして、基本目標に「地方とのつながりを築く」「ひとが集う、魅力を育む」という観点を加えたところ、それに賛同する自治体が増えたのです。

その背景にあるのが記事の冒頭で引用されている、当協議会会長でもある雄谷良成・(社福)佛子園理事長、(公社)青年海外協力協会(JOCA)会長の次の言葉です。

「だれもが居場所があり、役割を果たせるまちに向けて第一歩を踏み出せた。若者、高齢者、移住者、地元住民などがごちゃまぜになった共生社会をつくっていきたい」。そして、その先進事例として、佛子園とJOCAが連携して石川県輪島市で取り組む「漆の里・生涯活躍のまちプロジェクト」=輪島KABULET🄬が紹介されています。

記事では「第2期総合戦略」の課題も指摘しています。というのも、「意向なし」「今後検討」と回答した理由が、「第2期総合戦略」の公表以前に実施した2018年10月調査結果とは異なり、「人的資源の不足」「施策分野が幅広でどこから手をつけてよいか不明」が増えているからであり、うち人的資源の不足への対応として昨年度に実施されたのが、当協議会が内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局からの委託を受けて開催した「生涯活躍のまち」アドバイザー研修でした。

同研修は不動産、金融、医療福祉などの専門知識をもつ方や自治体職員の方を対象に、「生涯活躍のまちとは何か」「それをどのように事業を進めるのか」「そのためにどうやって住民のやる気を引き出すのか」といった講演、そして全国の事例紹介などを織り込みながらのワークショップなどを通して、「広域アドバイザー」を育成することを目的としており、昨年度は94人が3日間の全講義を受講しました。

今年度はさらにバージョンアップしたプログラムとともに、上記のアドバイザーを実際に地域へ派遣して、まちづくりの課題解決を図る試行的事業も実施する予定です。さらには自治体とのマッチングを図るべく、アドバイザーのデータベースの作成ならびに相互の交流・情報交換の「場」をつくってまいります。

記事最後には内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の中野孝浩・内閣参事官の言葉も紹介されています。

「目標と理念を地域の関係者が共有した上で、担い手を作ることが重要。活用可能な補助金制度や、その組み合わせ方も周知していきたい」

本格的な事業化を目指した生涯活躍のまちづくりがリスタートしています。

なお、同記事の内容は2020年6月15日付『日本経済新聞』にも「『生涯活躍のまち』推進自治体増 『全世代化』が奏功」として掲載されています。

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