4年前、国内47都道府県のうち唯一スターバックスコーヒーが進出していなかった鳥取県に同店舗がオープンしました。それ以前、鳥取県の平井知事は「鳥取県にはスタバはなくてもスナバ(砂場=鳥取砂丘)はある」とお得意のダジャレを披露されていましたが、いまや日本の全国各地で見かける米国シアトルで生まれたコーヒーショップチェーンには統一した接客マニュアルはないそうです。

たとえば、お客さんへの挨拶の仕方もお店で様々。今ならコーヒーの容器に「コロナに気をつけましょう」というメッセージを印刷してもいい。共通するのは現場にいるスタッフが、ここを居心地のいい場所にしようという思い。自分たちの言葉で接してくれるので、訪れるお客さんにも気持ちが伝わり、また来たくなる。スターバックスの「OUR MISSION」である「人々の心を豊かで活力あるものにするために--ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」をスタッフが共有しているからでしょう。その上で「誰もが居場所と感じられるような」お店独自の創意工夫ができるので仕事が楽しくなるし、スタッフが楽しそうだから、それがお客さんを心地よくしてくれるのです。

これは企業経営だけでなく、まちづくりにも当てはまるのではないでしょうか。「このまちを居心地のいい場所にしたい」という思いをみんながもっていれば、そこに長く住む地元の人も、新しく住民となった人も、同じ方向に見ることができます。当然、もめごとも起こるでしょうが、目指すところが同じであれば、それはむしろ歓迎すべきこと。そういうコミュニティの方が不測の事態に対応できる柔軟性が生まれると思うのです。

ちなみに写真は埼玉県川越市の蔵造通りのエリアにあるスターバックスです。江戸時代、蔵の町として名高かった川越は「小江戸」とも呼ばれており、そんな歴史に合わせて瓦屋根と木の壁でできた和風「スタバ」が生まれたのでした。