4月18日(月)、当協議会の正会員である(公社)青年海外協力協会(JOCA)の鳥取県南部町の拠点、JOCA南部の新しい施設の施主検査が行われました。

「厨房のカウンターに立ってみてごらん。ここからだと死角がないんだよ」と施主であるJOCAの雄谷会長。


一方、お客さんの方はちょっとした隠れ家的な気分で食事を味わえそうです。各スペースに高低差を設けているので、そこに集う人たちの目線が微妙にずれる。都会のお店で別のテーブルのお客さんと偶然目が合って、さっと外すという経験はないでしょうか。そんな気まずさがたぶんない。ただ、目は合わない反面、人の気配は常に感じるので、ひとりでいても温かさを感じる。そんな空間になるような気がします。

雄谷会長は「今回の設計ではアンジュレーションを意識した」とも言われていました。「 アンジュレーション(undulation)」とは、ゴルフコースでいうところのフェアウエーやグリーンなどの起伏のことです。「地方は都会と違って土地が広く、家も大きいから、たいてい室内はフラットなつくりになっている。それに慣れている地元の方々がこの空間をどんな風に感じ、使ってくれるか、楽しみだね」

本施設を設計された(株)kymaの土用下社長。後ろは車いすが入れるように本棚を取り外し式にした。

拠点施設と隣のグループホームはつかず離れずで建物の間にはちょっとした小道が通っています。また、第2期工事では拠点施設の向こう正面にウェルネス、保育所、グループホームが入る建物ができて、その間の広場が子どもたちの遊び場になる。そうなるとどんな場所のなるのか、想像は尽きませんが、JOCA南部はこの建物だけにとどまりません。

「少子高齢化、人口減が続いている南部町で、かつての歴史の流れを感じてもらい、地域の人々の地元への愛情を呼び覚ます。そんなデザインがあってもいいのではないか」という雄谷会長からは、入り口の暖簾の色を普段の日常と祭りなどのイベントによって分けてみてはどうかとの提案がありました。普段の「ケ」の日は白を基調とした落ち着いたもの、非日常の「ハレ」の日には赤の熱いイメージのそれと使い分けるのです。さらにはその暖簾を法勝寺地区の家の軒先に、
昔の「旗日」のように掛けてもらう。そうすることで地域の人々の気持ちが高揚するだけでなく、まちの歴史を振り返り、地元に対する誇りと愛着が高まる機会になるとのこと。

さらにイメージが膨らみ、「施設の近くを通る旧街道の両端に2本づつ幟を立てよう」という話にもなりました。雄谷会長いわく、「 夕暮れ時、(法勝寺川を挟んだ向こう側の小高い山の上にある)法勝寺城址をバックにした幟がシルエットになる光景が目に浮かぶ」

ちなみに施設内の温泉の暖簾には、大山の岩風呂=「山」、赤い御影石の風呂=「桜」、個浴=「咲」、そして隣接する大豆の加工所には「豆」を、JOCA南部が運営する学童保育と放課後等デイサービスに通う児童に書いてもらい、それを(株)グルーヴィのデザイナー・武生智さんがデザインしました(赤い暖簾も武生さんのデザインです)。

                      大山の岩風呂

JOCA南部のオープンは6月11日(土)の予定です。また新たな「生涯活躍のまち」が生まれます。