2月5日~7日、東京で開催された内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局主催「生涯活躍のまちアドバイザー研修」は今年度最後の4回目。60人近くの方々にご参加いただきました。

はじめは創生本部事務局の中野孝浩内閣参事官より、昨年末に閣議決定された「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」が示す、重点を全世代・全員活躍まちづくりへとシフトする、新たな「生涯活躍のまち」のあり方が示されました。誰にでも居場所と役割があるコミュニティづくりという基本は変わらず、中野参事官が紹介する全国各地の豊富な事例は大いに参考になるものでした。

続いて、事業者の立場から、社会福祉法人佛子園の速水健二さんの報告です。佛子園の本部であるB’s行善寺の代表を務める速水さんからは、障害者の就労継続支援、放課後等デイ、介護保険などの事業を組み合わせた、障害者、高齢者、子ども、地元住民などが「ごちゃまぜ」で暮らす日常を語っていただきました。速水さんいわく「障害者は突然大きな声を出すっていいますけれど、うちのレストランでビールを飲んでいる近所のおじさんも、酔っ払って大声出して、寝てしまったりする。たいした違いはないんです」に笑いながら納得。

3人目はstudio-L代表の山崎亮さん。この日のテーマは、空き家はたくさんあるけれど、所有者が貸してくれないという全国の自治体が抱える共通の課題について。家の持ち主が見ず知らずの人に自宅を貸したがらないのは、その歴史を知らないからだといsて始めたのが「空き家ノート」だそうです。家の記憶をノートに記し、家主と店子がそれを共有する。そのことで貸す側も安心してくれる。studio-Lは、こうしたきめ細かい手作りの作業を各地に合わせた形で展開しているのです。

その後は3人の講演者に公益社団法人青年海外協力協会(JOCA)事務局長の堀田直揮さんが加わっての座談会。途中からは参加者も飲み物を片手にまちづくりの難しさ、楽しさなどを語り合い、そのまま懇親会へと移行しました。参加者同士の情報交換も交えながらのひととき。中締めは(一社)コミュニティネットワーク協会会長、お茶の水女子大学名誉教授の袖井孝子先生に挨拶をいただきました。袖井先生は生涯活躍のまちが第2期が全世代を対象とすることを高く評価。とりわけ大学卒業が就職氷河期に当たってしまった世代が地方で活躍できる場をつくることの大切さを強調されました。

2日目以降は講義とワークです。東京大学高齢社会総合研究機構の後藤純特任講師、荻野亮吾特任助教より、それぞれ「医療・職業・住環境(い・しょく・じゅう)に絞った政策課題」(2月6日)、「地域運営組織の活用」(2月7日)というテーマで話を。上記の堀田さんからは佛子園とJOCAの連携で進めている各地の事業を紹介。生涯活躍のまちの要素として「活躍」「住まい」「移住」「健康」「コミュニティ形成」を挙げて、これらを組み合わせた事業案を考えることをゴールに堀田さんのファシリテーションでワークショップを行いました。

ワークはグループごとに行いましたが、どこも笑いが絶えず、たくさんのアイデアが出されました。これまでの講演、講義で、「地域の課題の解決を目指す『生涯活躍のまち』って面白そう」と思っていただけたからではないでしょうか。そう、「これをやったら楽しそう」と思ってもらうのが大事なのです。

生涯活躍のまちアドバイザーは、自身の専門分野(金融、医療、介護、不動産、子育て、教育などなど)を地域づくりに生かしてもらうことが目的ですが、まずは地域の人々の気持ちに寄り添う。そこから入らないと、「どうせ商売のために来たのだろう」と思われてしまいます。

生涯活躍のまちを進めるための障害になるのが「縦割り」。これは行政だけの問題ではありません。どこの組織にもある。それに対して、アドバイザーは分野横断的に考えて、動く(自分の専門外については、そうした人材を探せばいいのです)。

3日間受講され、修了証を手にしていただいた方は40名を超えました。これまでの修了者を合わせると約90名。全国各地でアドバイザーとして活動していただけそうな仲間が増えて、とてもうれしく思っています。