2月11日、NHKで『ワタシたちはガイジンじゃない!』という番組が放映されました。1990年の出入国及び難民認定法の改正によって約26万人の日系ブラジル人が日本に働きにきてから30年。宮藤官九郎さんが日系ブラジル人にインタビューをし、舞台を4つの時代に設定し書いた脚本を、イッセイ尾形さんが一人芝居で演じる様子を放映したものです。場所は1,000人ほどの日系ブラジル人が住む名古屋市の中駒九番団地。即席でつくった舞台でイッセイ尾形さんは自治会長のホリイさん(1990年) 、バッテリー工場主任のカヨさん(1994年)、土木現場監督のトシちゃん(2008年)、日本に来て30年が経ったロベルト(2020年)に扮します。

テーマは分別ごみ、工場でのカニ歩き(?)作業、リーマンショック、そして新型コロナ--宮藤官九郎さんが生の声を基につくった脚本とイッセイ尾形さんの造形する人物像の面白さとリアルさで、団地の広場に集まった日系ブラジル人、自治会活動を行っている高齢者夫婦、団地に住む日系ブラジル人の相談相手や、コロナ禍で生活が苦しくなっている人たちを支援しているボランティアの人たちは笑いながらも、やがて頬から涙がつたっていました。

日系ブラジル人の「笑い」と「涙」の30年をイッセー尾形が一人芝居!脚本は宮藤官九郎! ワタシたちは ガイジンじゃない! |NHK_PR|NHKオンライン

(公社)青年海外協力協会(JOCA)が現在、宮城県岩沼市で開設準備をしているJOCA東北の拠点施設において、当初予定していたオープニングのイベントを中止し、粛々とセレモニーを行うことを決定しました。

3月にオープンする拠点施設は保育園、食堂、温泉、フィットネス、高齢者デイサービスなどを運営します。東日本大震災の支援のために現地に入ったJOCAの活動が「生涯活躍のまち」事業に取り組むことになって10年が経ちました。2月12日には施主検査が終了し、さあこれからという翌日の夜に起こった福島県沖地震。岩沼市も震度6に見舞われ、建物の一部に損傷がありました。現地におられたJOCA東北の代表である北野常務理事はこう語っています。

「ぼくたちは復興から創生へということで進んできたけれど、どこかで浮かれていたのではないか。それを今回の地震でたしなめられ、まだまだ復興は続くことを思い知らされた。オープニングセレモニーは厳粛な気持ちで行いたい」

そして、JOCAの雄谷会長は、「静かにスタートしよう。たとえば、おいしいお蕎麦を誠意を込めて提供するというように、日々の仕事をきちんとやっていくことから始めて、ゆっくり人と人とのつながりができていけばいい」

JR岩沼駅から徒歩8分にあるJOCA東北の拠点は、仙台近郊のベッドタウンにあたる都市郊外型のまちです。これまでの取り組んできた地域に比べると施設の規模も大きく、青年海外協力隊経験者が中心となったJOCAとして、岩沼市では多文化共生のコミュニティも目指しています。それゆえセレモニーではJOCAの特色を生かした国際色豊かな出し物や展示、屋台も考えていたのですが、 国籍を越えて人々がふらりと訪れるような、そこには地域の子どもから高齢者、ハンディキャップのある人、ない人も普通に時を過ごしているような場所をつくっていくということであれば、それに相応しいスタートかもしれません。

JOCAは、岩沼市で進める「生涯活躍のまち」のプロジェクトを「IWANUMA WAY」と呼んでいます。WAY=道には次のような意味が込められています。

歴史の時間軸としての「道」 岩沼はかつて水陸交通の要衝で、仙台藩領内でも大きく栄えた宿場の面影は今も街角に残っています。

復興から創生へ向けての「道」 東日本大震災からの復興を経て地域の創生へ。新たなコミュニティづくりへと歩んでいます。

世界とつながる「道」 東北の空の玄関口である仙台国際空港から岩沼まではわずか20分。世界はすぐそこにあります。

未来への「道」 日本に暮らす様々な国籍の人たちが一緒になって日常を送る。そんな場を育んでいきます。

冒頭でNHKの番組を紹介したのは、そこに「未来への『道』」とつながるものを感じたからです。多文化共生とはお互いの文化や芸術、生活慣習などを学ぶだけではなく、普段の生活で発生するトラブルを折り合いをつけながら解決していくことでもあります(イッセイ尾形さん演じる自治会長のホリイさんやバッテリー工場主任のカヨさんのように)。

私たちはブラジルでは日本人といわれ、日本ではブラジル人と呼ばれる--ある女性が語っていました。今は笑って振り返られるけれども、日本に来た当初は毎日泣いていたとも。

『ワタシたちはガイジンじゃない!』は、ロベルト扮するイッセイ尾形さんのギターに合わせて、みんなが一緒に「 ワタシたちは ガイジンじゃない、ニンゲンだ」と歌って幕を閉じます。