10月23日(水)~25日(金)にかけて札幌市の北海道自治労会館において開催された表記の研修では、竹中貢・上士幌町長、中野孝浩・内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局内閣参事官、後藤純・東京大学高齢社会総合研究機構特任講師にパネリストになっていただき、五十嵐智嘉子(一社)北海道総合研究調査会理事長がファシリテーターとして、会場から出た質問に回答しました。その概要を紹介します(以下、敬称略)。

【会場からの質問】竹中町長のリーダーシップで上士幌町がまちづくり会社やDMOなどの法人を立ち上げたことはすごいことだと思う。

【竹中】官民協働とはいっても、官から民への委託事業がないと、まだまちづくり会社は回っていかない。したがって仕事をどれだけつくれるか。たとえば、シェアオフィスの運営などにより(都市からの)関係人口が増えると、ある程度の自走が可能だろう。われわれはこれから地方創生の流れがくるという信念をもって続けるしかない。答えは後からついてくる。

【後藤】そこで人が生きている限り、何らかのビジネスは生まれる。しかし、それを町が主導するとおかしくなる。まちづくり会社を立ち上げればよい。ただし、そこにはマネージャーではなく、プロデューサーが必要だ。これからの時代はどうなるかわからない。どんなニーズがあるか、社会実験をやればやるだけニーズが見えてくるはず。

【会場からの質問】日本版CCRCがもはや高齢者だけの施策ではなく、全世代であるということがわかった。首長のリーダーシップがあるのとないのとでは大違い。官民連携のための人材交流が必要だ。最後は民間ベースで自走するためには人材育成が重要だと思う。

【中野】官民の交流の意味は、価値観が違う者同士がわかり合うことだ。官は公平公正、民はエッジが効く提案はできるが、価値があっても利益を生まれないところには手を出さない。お互いのいいところを学び合うことが大切。

【会場からの質問】地元に介護施設などがないため、外部から事業者が入るケース、あるいは地元の事業者との競合するようなケースが考えられる。その際のハードルになるであろう住民の合意をどうとりつけるか。

【五十嵐】輪島KABULETを立ち上げた際、地元の社会福祉法人から「黒船が来た」といわれたそうだ。それに対して、JOCA・佛子園から10名を移住させた。そして個別のニーズを探り、住民の側に立って市と向き合い、地元の社会福祉法人が取り組んでいなかった分野(障害者就労継続支援B型)を始めた。

【会場からの質問】株式会社でデイサービスをやっている。空き家活用はどうのように進めているのか。

【竹中】上士幌町では空き家活用はしていないが、大きな家に高齢者がひとり暮らししているケースが多いので、住み替えが課題となっている。たとえば独居の高齢者にまちなかで住んでもらうと町民との交流をしやすくなり、元気になると思う。また閉店した商店を活用しようと思っても、家主が2階に住んでいてはよろしくない。そういう対策をまちづくり会社に担ってもらおうと思っている。

【会場からの質問】生涯活躍のまちを推進する意向のある自治体の数が少ないと思う。生涯活躍のまちへの取り組みの「とっかかり」にはどういうものがあるのか。

【中野】生涯活躍のまちの成功モデルをまるごと真似してもうまくいかない。住民のニーズを汲みながら案を考える際、たとえば銀行の方が加わって、地域に入り提案をしていく役割を担っていただきたい。

【後藤】ニーズを把握していないでマッチングするからうまくいかないのである。たいていニーズといわれるものはシーズに過ぎない。丁寧に住民の話を聞いて、みんなでニーズを汲んでいくことが大事。

【会場からの質問】北都銀行は5年前から秋田駅前のCCRC(来年10月オープン予定)の準備をしている。1~4階がテナント、5~17階分譲マンション。分譲マンションは3カ月で完売しているが、テナント部分に空室リスクがある。また、地域包括ケアシステムで成功している事例はあるのか。

【会場からの質問】予算や継続性や事業性というところで想像ができない。

【後藤】ちなみに交流センターは建物の2階につくってはいけない。そこで何をやっているのか、楽しそうな様子が外から見えないと。そうすると人が自然と集まってくる。地域包括ケアシステムについては、それはひとり一人につくるものであって、まちにつくるというものではない。

【中野】事業性についていえば、背伸びをせず、できるところから始めればよい。そのためにニーズの把握は必須である。