先日、横浜市の「あーすぷらざ」(JOCAあーすが神奈川県から指定管理を受けて運営)でドキュメンタリー映画『ピグレット』の上映会、そして同作品の監督である伊勢真一さんと雄谷良成・JOCA会長(佛子園理事長、生涯活躍のまち推進協議会会長)とのトークセッション「ごちゃまぜを語ろう」が開催されました。

伊勢監督には、重度のてんかんと知的障害のある姪っ子の奈緒ちゃんとその家族を撮り続けた『奈緒ちゃん』や『やさしくなあに』といった作品があります。20年前に完成した『ピグレット』は、同監督の姉であり、奈緒ちゃんの母である西村信子さんと、障害のある子どもをもつお母さんたちが立ち上げた小さな作業所「ピグレット」の日常を描いた映画です。

トークセッションでは伊勢監督とは25年以上のお付き合いになる雄谷会長からの「自分の家族を長い年月かけて撮る、それを掻き立てるものは何ですか」という問いに、伊勢監督は「自分がこれを撮りたいというよりも、目の前にある自然や人に『撮ってくれ』と言われて、それを撮っているという感じなんです。ドキュメンタリーでも劇映画でも『いい人や自然は誰が撮ってもいい』と気づいたことで、自分は初めてプロになれたんだなと思えました」。この話の流れで出たのが「黒澤明よりも映る人の方がすごいんです」という言葉。

伊勢真一監督

「映る人が一生懸命生きている、そこにいるだけで周りの人に影響を与える。ぼくはそばで撮っているだけ。『こういうアングルで撮ったらうまいって言われるだろうな』とか『こうしたらいいインタビューがとれる』と思っているうちは半人前。映る人が生き生きしているかどうかが大事なんですよ」という伊勢監督に対して、雄谷会長は、自身も経験した青年海外協力隊を例に挙げて「途上国で支援をすると、『自分はこの国を救いにきた』と勘違いしてしまうんですよね。福祉の世界でもそう。こちらが支える側であちらが支えられる側という意識が拭えない。そこからいかに脱却するかということは伊勢さんの『こちらが撮りにいっているうちはだめ』に通じるところがあると思います」。

雄谷良成・JOCA会長

それから2人の会話のテーマは、11月に放映された雄谷会長の人としごとを描くNHK「こころの時代~宗教・人生~”ごちゃまぜ”で生きていく」に移り、2000年前から読まれ続ける仏教の言葉について、宮沢賢治の『雨ニモ負ケズ』を例にとりながら、それがどうやって「ごちゃまぜ」という表現になっていったのかという話に進んでいきました。

人と人が関わることの意味を映像や宗教の視点から語りあったトーク全体の内容については弊誌『生涯活躍のまち』で掲載予定です。どうぞお楽しみに。