2019年4月10日付『朝日新聞夕刊』の連載コラム「思考のプリズム」に掲載された東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授の伊藤亜紗さんの「自分をネットワーク化する 共鳴し引き出される力」は示唆に富んだものでした。若年性アルツハイマー型認知症の丹野智文さんの話から始まって、目の見えない知人のマラソンの感覚へ。丹野さんは、記憶という能力は「私」にではなく、「私たち」に属するものだという発想をもち、全盲のその方はマラソンの際、一本のロープでつながる伴走者の動きを通して、「本当にときどき、目の前に走路が見えるときがある」といいます。それを伊藤さんは「相手の目を使って見る」という表現をします。「自分をネットワーク化する」ひとつの形なのでしょう。人と人との関係に新しい可能性を感じました。