新年あけましておめでとうございます。旧年中はたいへんお世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

表題は私の実家がある香川県三豊市で10年以上前からリサイクル業を営んでいる人の話です(写真は同市の庄内半島にある紫雲出山から見下ろした瀬戸内海の風景です)。彼はかつて東京・三軒茶屋で古本と中古DVDを販売するお店を開いていました。当初は売り上げもまずまずだったのですが、近所に大手のチェーン店(ブックオフとTSUTAYA)がオープンすると、お客さんが激減。ジリ貧になる前に店を閉め、故郷の三豊市に戻りました。

とはいえ、なかなか仕事は見つかりません。どうしようかと思案しているなかで目についたのが、地域に増えている 古い家と解体家屋 です。その所有者が処分に困っている建具や箪笥、鏡台などを買い取り、アンティークとして新しく生命を吹き込んで売るのはどうだろう? そう思った彼は地元だけでなく、四国四県にも軽四トラックで足を延ばし、細かく地域を回り、地元の住民を訪ねて回ったそうです。

当然、怪しまれます。ある家では「知らない人に売るくらいなら、捨てた方がよい」と言われたそうです。お金を介することでの関係を嫌がったのでしょう。捨てるものを買うというのだから悪くないだろう、という当初の思惑は甘かったことを痛感しました。

それでも少しづつ実を結び始めたのは、こまめに通い、買い取るときには決してほしいものだけに限定しなかったこと。空き家の所有者が「これも」というものは全部買い取る。そして、それらが売れたら、報告をする。そうしたことを繰り返ししていくなかで、地元の解体業者さんなどとも知り合いになり、廃校になった小学校の椅子や黒板、廃屋になった診療所のむかしのベッドや棚(そういうものが好きな方がおられるそうです)などを引き取らせてもらうようになりました。普通のリサイクルショップは、基本、お客さんが持ち込んでくるモノを買い取るのですが、彼の場合は買い取りに出向いた点が違います。最近は家具だけでなく骨董品の取り扱いも増えたとのこと。

それらを綺麗にするために地域の高齢の大工さんや塗装職人さんに手伝ってもらったりしています。人もモノも生かせる方法はあることを実践しているようでした。もし、彼が行っているような事業が行政と連携できれば、後継者がいなくて困っている商店やお医者さんの情報も共有できるので、事業継承にも結びつけられるかもしれません。

彼のビジネスとは違いますが、昨年、出版された 札幌市でリサイクル業を営む著者 による『ザ・ソウル・オブ・くず屋』によると、集団資源回収、廃棄物再生事業、 再生原料を利用したエコ商品の販売などが循環経済そのものであることがわかります。 2015年に国連加盟国すべてが合意した「SDGs=持続可能な開発目標」が掲げる「貧困をなくそう」「質の高い目標をみんなに」といった目標にも合致しているのです。


瀬戸内の小さな町で始められたしごとが持続可能な社会への貢献につながっていることを教えられました。