同名のセミナーを今年の9 月14日にリアル & オンラインで開催した。講演者は日本で初めてCCRC(Continuing Care Retirement Community)を紹介した日本福祉大学客員教授の松田智生さん、「屋根のない長屋」をコンセプトに、施設に入らずとも地域の人々支え合って暮らす仕組みづくりに取り組んでいる株式会社たぬきち商事代表取締役社長の秋丸アルハさんである。
 今号では2 人の講演内容を紹介するが、その後の作家・エッセイストの松原惇子さん、たぬきち商事取締役・神馬幸子さんが加わってのパネルトークでは、会場に集まってくださった、主に高齢女性の参加者の方々の熱が伝わってきた。「私はこう暮らしたい」という思いだけでなく、吉永小百合さんが主演した映画『こんにちは、母さん』の一場面を取り上げ、「身体の衰えを感じるのは、これまでできたちょっとした動きが難しくなったときなんです」、あるいは「ケアされるばかりの存在はいや。身体が元気な限り、役に立ちたいと思っているから私もボランティア活動をしています」など、コメントの内容は様々だが、共通していたのは皆さんが「自分事」として語ること。それが「熱源」であった。普段はビジネスマンや自治体の首長、地域づくりの担い手に向けた講演をしている松田さんが「今までになかった雰囲気」と言っていたこともつけ加えておこう。
 上記のたぬきち商事が提唱する「屋根のない長屋」は、いま住んでいる場所を安心できる地域にするという試みである。安心とは医療・福祉だけで担えるものではない。人との交流、文化や娯楽、あるいは生きがいなど、様々な要素があってこそ、得られるものだ。生涯活躍のまちの前身である日本版CCRCにも分野横断的な発想があったことをあらためて認識するセミナーでもあった。