News
『生涯活躍のまち』最新号の特集は「サルデーニャへ元気を学びにいく」
人と地域を元気にするにはまず自分から――ここ数年、社会福祉法人佛子園、公益社団法人青年海外協力協会(JOCA)が掲げ、実践している。元でいるために必要なことは何か? よく食べて、よく運動して、よく眠る。これは疲れた脳にも効く。
脳が疲れを感じているとき、人は疲れを実感しやすい。楽しいことをやっているときは、身体をたくさん動かしていても疲れないものだ。「寝食を忘れる」がそうだろう。一方、身体を動かしていないのに、倦怠感を覚えることがある。それは脳が何かをすることを「めんどくさがっている」状態だ。加藤俊徳著『「めんどくさい」がなくなる脳』(SBクリエイティブ)によれば、脳のもつ8つの領域をうまく使い分けることで解消できるとのことだが、いますぐ「めんどくさい」を退治するには、十分な睡眠をとる、ゆっくりお風呂に浸かる、ヨガや森林浴などを通して瞑想するのがいい。これらは“Passive Rest”と呼ばれるもので、多くの人が納得するだろう。しかし、“ActiveRest”と呼ばれるものもある。運動だ。
運動したら余計に疲れると思うかもしれないが、仕事による疲れは仕事脳を酷使しているからで、仕事脳を休めればいい。身体を休めていても、脳は自ずと仕事のことを考えるようになっているので逆効果なのである。むしろ身体を動かす。たとえば筋トレ。限界ギリギリの重さのバーベルを持ち上げようとしているとき、「あの業務をいつまでに片づけなくては」なんて考えるだろうか。あるいはランニング。走り始めは雑念がまとわりつくかもしれないが、距離を追うごとに身体が温まり、息を切らしながら「あとどれだけ走ればゴールか」に集中する。仕事のことなど頭から飛んでいるはずだ。そしてやりきった後には「めんどくさい」もなくなっているに違いない。
というわけで、佛子園とJOCAでは職員に運動習慣をつけることが推奨されており(厚生労働省が定める運動習慣は、1回30分程度の運動を週2回、それを1年間続ける)、それが仕事にどう活きるのかの実証実験の意味も込めて、2023年11月5日~11月16日にかけて海外研修が行われた。
向かった先は地中海に浮かぶイタリアの島、サルデーニャである。世界のなかでも突出して100歳人(センテナリアン)が多いところだ。サルデーニャ以外にも高齢者が元気な地域として、日本の沖縄、米国カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカのニコジャ島、そしてギリシのイカリア半島が挙げられ、それらは「ブルーゾーン」と呼ばれている(詳しくは同名の書籍をお読みいただきたい)。われわれも元気を目指す者としてブルーゾーンを体感しようということになった。
とはいえ、ただ現地を訪れるのではない。佛子園理事長、JOCA 会長を務める雄谷良成を筆頭に、両組織の理事が審査員チームを構成し、綿密なプログラムをつくる。参加者はチームを組んで総合点を競い合う。かつてのテレビ番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」のように(ご存じない若い世代はネットで検索してみてください)、その場で提示される課題に四苦八苦しながら取り組むのである。
それらを一つひとつ乗り越えることで、なぜそのようなプログラムが練り上げられたのかが後になってわかるという仕掛けがなされているのだが、「ちょっとなに言っているかわからない」という向きにも、今号と次号に渡る研修報告を読んでいただきたい。「目からウロコ」になると同時に、あなたの組織での人材育成にも役に立つこと請け合いだ。
表紙写真:サルデーニャ特別自治州州都、カリアリから北へ約93kmの山岳地帯セーウロ村にて(雄谷良成撮影)。