皇居のお濠の前に立つビルの1階に一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会、通称「エコッツェリア協会」が運営する3×3Lab Futureはある。サードプレイス(会社でも自宅でもない場所)の“3”と、トリプルボトムライン(経済・環境・社会)の“3”を込めて名付けられた空間は、大丸有地区(東京都千代田区の大手町、丸の内、有楽町の頭文字をとった言葉)という日本の中心に位置するビジネス街において異彩を放っている。そこで東京一極集中からどう脱却するかが語られているからだ。
 丸の内、大手町エリアで働く約28万人のビジネスマンを、三菱総合研究所主席研究員の松田智生さんが「逆参勤交代」のマスボリュームの対象とみているのは周知のとおり。3×3Lab Futureでは全国の市町村から首長や職員の方々が訪れ、首都圏の人々と地域づくりについての楽しくも熱い対話や交流が行われているのである。
 「第3章 コミュニティづくりの肝」における「互いの変化や普遍的な部分について、受け止める力を持つ人が多いコミュニティはとても魅力的であり、自然と仲間が増えていく」や「メンバーが同じ方向を向くよう、コミュニティ運営者は意識し続ける必要がある」、「第4章 『場』を活かす『仕組み』」における「(登壇者の講演では)失敗談や課題、あるいはその事柄における感情の起伏などを伝えてもらうと良いだろう」や「(イベントの当日には)互いに『相手がやると思っていた』という状況にならないよう気をつけたい」といった指摘は、主に3×3Lab Futureを運営するに当たって肝要なこととして記されているが、まちづくりに関わる際にも欠かせない視点だ。「第5章 持続可能な未来のために」で説明される、プラットフォーム(コンセプトメイク、ネットワーキング)→プロジェクト(プロトタイピング、キャスティング)→ビジネス(ビジネスモデル、運動母体の確立)へと進むフェーズにおいて、第1フェーズから第2フェーズへ移行する際の「リード役は、『プロジェクト』のゴール設定やマイルストーン(中間目標)を決めていく」ことも忘れないでおきたい。
 地方創生においても、とかく「川下」でのマネタイズに多くの企業が群がり、事業の種作りである「川上」での価値創造が放棄されがちだ。川上にもっと目を向けよう。「東京・丸の内発」の意義はそこにある。(芳地隆之)