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今月のおすすめ本はダン・ビュイトナー著『ブルーゾーン セカンドエディション』
「ブルーゾーン」とは100歳人(センテナリアン)が多いエリアのことをいう。この言葉を使ったのは、地中海に浮かぶイタリアのサルデーニャ島に住む医師、ジャンニ・ペスだ。ペス医師は国勢調査のデータを使って、サルデーニャ島の孤立した地域を探し出し、そこにもっともセンテナリアンの男性が集中していることを発見した。その後、ベルギーの疫学者、ミッシェル・プーランがベスの発見を国際的な視点から検証、確認し、「Experimental Gerontology(実験老人医学)」誌に発表。それを読んだ冒険家のダン・ビュイトナーが「ナショナル・ジオグラフィック」の取材でサルデーニャ島を訪れた。
世界を旅し、最も長生きしている地域を特定するという目的をもっていた彼は、「ブルーゾーン」という言葉に触発されて、さらに日本の沖縄、米国カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカのニコジャ島、ギリシャのイカリア半島へも足を延ばす。そして、ブルーゾーンを「人口統計学的に確認された長寿の場所の国際的呼称として確立」したのである。
ブルーゾーンに共通するのは高齢者向けの施設がないこと。彼ら、彼女らは家族とともに暮らしているか、単身であっても周囲に気にとめてくれる人がいる。健康のためにジムに通うという習慣はない。羊飼いや三線づくりといった仕事、あるいは自給自足的な生活のための農作業など、自ずと身体を動かす日常生活を送っているのである。沖縄の高齢者が元気な理由をビュイトナーが「IKIGAI」(生きがい)と表現しているのも興味深い。その意味を正確に表す英語がないからだろう。
ブルーゾーンの人々は植物性食品を多く摂る。沖縄の人々が「腹八分目」を大切にし、サルデーニャの人々が毎日、適度に赤ワインを飲むのは、地域の仲間とともにいるからこそ。ひとりではセーブするのが難しくなる。長年培われてきた伝統や文化、生活習慣は人から人へと伝わっていく。だからこそ人とのつながりが大切なのである。
ネットフリックス(世界の映像コンテンツを配信するストリーニングサービスを提供)では、ビュイトナーが道案内人となって上述のブルーゾーンのほか、自分たちが住む地域をブルーゾーンにするという米国各地の取り組みを紹介する『100まで生きる ブルーゾーンと健康長寿の秘訣』というドキュメンタリーが視聴できる。ため息が出るくらい美しい自然の色合い、「年齢を重ねることは素晴らしい」と思わせてくれる人々の笑顔など、映像も合わせて見ることをお勧めする。(芳地隆之)