当協議会の正会員である社会福祉法人佛子園ならびに公益社団法人青年海外協力協会(JOCA)が合同で実施している、リーダー育成のための実践共同研修では、プログラムとして自転車の長距離ランを取り入れている。両団体では「人と地域を元気にするにはまず自分から」ということで、職員が「よく食べ、よく運動し、よく眠る」を実践しており、自転車は「よく運動し」の一環だ。運動は身体を鍛えるだけでなく、あえて身体を動かすことで疲れた仕事脳を休ませるActive Restの効果もある。
 最近の私たちのブームである自転車の運動効果や乗り方のコツを知っておきたいと思って、本書を手に取った。
 米国スポーツ医学会は、健康づくりのための運動として、「50%程度の運動強度で、1日に30分間、週に5回、または70%程度の運動強度で、1日に20分間、週に3回の有酸素運動を行う必要がある」としている。息が切れてもう動けないというときの運動強度が100%だと理解すれば、50%はその半分。70%は動けないまではいかないが、それなりに疲れるくらいだろうか。ところが、自転車は、さほどキツさを感じずに70%に達することができるのである。
 たとえばサドルを高くする。低いと膝を深く曲げた状態で力を入れるので、血流が圧迫され、足の血流が滞りやすい。すると酸素不足の領域が増えて乳酸が蓄積する。筋肉をつけるためには乳酸が溜まるような状況をつくり出して成長ホルモンを促すことが有効だが、すぐに疲れて動けなくなってしまっては有酸素運動が続かない。自転車で長時間走り続けることができる人は、体重1キログラム当たりの「最大酸素摂取量」が大きく、有酸素性の代謝でエネルギーを産出する。そうすると心拍数は上がる。運動強度は心拍数の大きさに比例するので、上記の米国スポーツ医学会の規定をクリアすることに近づくわけだ。一方、空気抵抗を考慮すれば、速度を上げたことで運動時間が減っても、遅いスピードで長く走るよりもエネルギーを消費するというデータも示されている。
 ちなみに自転車を停止しているときはサドルを跨いだままではなく、自転車の横に立ち、スタート時に再び座って発進しよう。リスタートがインターバルトレーニングになるから。
 本書で記された効用を知っておけば、通勤や買い物で自転車を使うことによっても体力アップが図れるのである。おかげで当方もさらにモチベーションが上がった。(芳地隆之)