元旦の能登半島地から始まった今年の佛子園・クリスマスパーティは、全国の方々から送っていただいた支援物資を受け入れる基地として、そこからトラックに荷を積んで能登半島へ向けて出発したShare金沢のS-Stadiumで開催されました。オープニング(後述)後の挨拶で雄谷理事長は様々な形で支援してくださっ方々へのお礼の言葉を述べた後、「被災された方々には当初、『どうして自分たちが』という思いが強くなっていきました。また『あのときこうしておけば』と自分を責めるようにもなりました。地震の追い打ちをかけるような9月には豪雨による水害が発生しました。それでもやがて現状を受け入れるようになるのですが、あるときから逆境に対しても挫けない気持ちが生まれてくるのです。『こんなことに負けてたまるか』と。能登半島の皆さんには敬意を伝えたいと思います」

佛子園の雄谷良成理事長の挨拶は皆さんへの感謝から
来賓の挨拶では、奥能登の仮設住宅とコミュニティセンター建設のために尽力してくださった衆議院議員の佐々木紀さんが登壇。「ごちゃまぜの共生社会をつくっていきましょう」とのメッセージを
続いて参議院議員の宮本周司さん。「来年こそ、素晴らしい年に」

 会場で”NOTO, NOT ALONE”の商品を販売している輪島KABULETの職員、木戸雪華さんは、発災直後は気が張っていましたものの、二次避難先から帰ってからは気持ちが落ち込むことが多かったそうです。「正直、辞めようかと思うこともありましたが、その都度(施設長の)寺田さんが励ましてくださいました。そしてNOTO, NOT ALONE研究所で Tシャツをつくるという新しい仕事をさせてもらうようになり、『やってやろう』というやる気が出てきたんです」と笑顔で語れらました。そして「このままでは輪島は人口減と高齢化が進む一方、あのまちを元気にしたいんです」とも。仮設住宅で暮らしながら、地域の皆さんを支援しているお母さんの姿を見ながら、2人のお子さんは育っていくのだと思います。

NOTO, NOT ALONE研究所の出店で。木戸雪華さん(左)と山本襟さん(右)

 今年のテーマは「世界の祭り」。会場内にはNOTO, NOT ALONEの各アイテムやB’s Flowerのハーブを活かしたドリンクを提供するお店の他、スペイン、ドイツ、オーストリア、インド、ベトナム、台湾、韓国、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンなど、各国の名物を楽しむことができる出店が軒を連ねました。

 なぜお祭りなのか。能登半島では地震が起こった今年も、能登町の宇出津のあばれ祭り、輪島市のキリコ祭りなど、能登を代表する祭りが開催されました。自然災害に見舞われると、イベントが自粛されがちです。「こんな非常時に楽しむなんて」という思いが先行してしまう。しかし祭りは、不謹慎でも何でもない地域の行事です。恒例の祭りを終えると、住民の皆さんは、また明日からがんばろうという気持ちになる。祭りは非日常の時間と空間ですが、それは日常を送るためのものでもあるのです。

 ならばここで世界の祭りを再現して、能登に日常をいうメッセージを込めるクリスマスパーティしようということになりました。オープニングは中国の春節に行われる龍舞、仮面をつけて町中を歩くベネチア・カーニバル、メキシコで死者の魂を迎える「死者の日」の装束のメンバーが会場を練り歩き、「死者の日」の楽団の演奏による『聖者の行進』とともに舞台下に集結しました。

中国の春節に行われる龍舞
水の都のカーニバル
「死者の日」のメンバーのうちの4人(ジョーカーにも見える)

 そこからは舞台にスポットが当たり、フラメンコの披露です。金沢市でフラメンコクラブ・ルナーレスを率いる中川恵子さんからレッスンを受けて、練習を重ねてきたという雄谷理事長と清水愛美理事による、今年初めて挑戦したとは思えないパレハ(フラメンコで用いられるステップや足の運び)。会場は躍動的な動きに目を奪われました。フラメンコギター、カホン(ペルー発祥の箱の形をした民族楽器)、カンタオーラ(女性歌手)といったプロの皆さんがさらに舞台を引き締めてくれます。

雄谷理事長はカンタオール(男性歌手)としても
清水理事の情熱的な舞い
そして、ペアで
最後はダンサー全員で

 MCはよしもと住みます芸人の皆さんです。今年は月亭方気さん(石川県住みます芸人)、吉田サラダさん(富山県住みます芸人)。昨年から、GOTCHA!!RALLY、駅ビアこまつ、クリスマスパーティなど、すっかりお馴染みの2人です。吉田サラダさんは「普段は地元のテレビ局での仕事が中心ですが、こうして地域の方々と直接向き合える仕事もうれしい」とのこと。月亭方気さんは能登半島七尾市出身。元旦は実家で被災しましたが、七尾市よりも被害の大きかった志賀町、輪島市での慰問落語会など、被災者にひとときの笑いを届けてきました。10月には「七尾市ふるさと大使」に就任しています。そんな2人のこなれた掛け合いを通してプログラムが進行していきました。

MCの吉田サラダさん(左)と月亭方気さん(右)
金沢大学合唱団の皆さんの透き通るような歌声
GOTCHA !! WELLNESSのメンバーはベリーダンスのアレンジ(?)を披露
JOCAの皆さんはインドのバングラビート
石川ジャンベクラブは西アフリカの伝統楽器ジャンベを中心としたアンサンブル
蕪城学童クラブの子どもたちはキレのあるダンス
ロック風に高校生バンド、NIL SENCEはアンコールで「オー・シャンゼリゼ」をロック風に

 Share金沢の本館では、資生堂の化粧セラピストの資格をもつ佛子園とJOCAの職員の「YOSOOU(粧う)」チームが地域の皆さんに化粧療法を伝授しました。彼女たちは能登半島の仮設住宅で住民の方々に向けたいきいき化粧教室も開催しています。

「YOSOOU」のJOCA職員・増田春菜さんにおしゃれにしてもらって、この笑顔

 会場でステージを見ていた佛子園の村岡裕・専務理事はこう語っていました。「ぼくは全国の福祉に携わる人たちにこう聞くんですよ。障害のある人の就労でつくったものは、おいしいですか? かっこいいですか? おしゃれですか?。利用者さんは、自分が提供する物品やサービスに対して、『がんばりましたね』とか『えらいですね』と褒められるよりも、『おいしいね』『かっこいいな』『おしゃれだ』と言われる方がうれしいし、やる気も出るんですよね」

 おいしい、かっこいい、おしゃれという佛子園が日頃から大事していることが垣間見えるクリスマスパーティ。雄谷理事長は毎年、こう言われます。

「1年間お世話になった人への感謝の気持ちを込めて、本気で練習して、舞台をつくり、皆さんに披露する。だからから楽しいんだよ」

ウクレレパイナのご機嫌なナンバーでフィナーレ
スペインのバル風のカウンターには故雄谷助成会長の3Dクリスタルフォト、会長の音声と「夜は来る」のメロディが内蔵されたサントリーオールド(会長が愛飲されていた)のサウンドキーチェーンが置かれていました。