佛子園、JOCA( 青年海外協力協会)の新しい拠点の立ち上げに当たっては、新しいコンセプトが設定される。昨年、鳥取県南部町に開設されたJOCAの拠点、法勝寺温泉では、建物がほぼ完成し、暖簾のデザインに入ったとき、JOCAの雄谷良成会長から「まちをデザインする」という視点を求められた。「地域をどうしたいか」までをイメージして暖簾はどうあるべきかを考えるということである(詳しくは弊誌25号「デザインしないデザインとは何か」を参照)。
 ごちゃまぜの拠点では、建築も、デザインも、自分の領域に留まっていては、その本質に迫ることはできない。
 今年の6月、JR 北陸本線小松駅の高架下に開設した地域の拠点「小松KABULET」は「佛子園初のアンテナショップである」が、「店内に限らず駅前商店街を巻き込んだ拠点」であり、「地元の専門学校に学ぶ留学生たちも地域に呼び込む」ことまでを射程に入れている。根底にはあるのは「地域を元気にする」だ。
 しかし、これらのコンセプトがプロジェクトメンバー全員に共有されているのか、疑問が生じたのはオープンの3カ月前。そこからプロジェクトが方向転換した。今号ではその渦中にいた、設計担当のkyma代表取締役・土用下淳也さん、アートディレクション担当のグルーヴィ・武生智さんの話を紹介する。当初は小松KABULETの新しさやその価値についての記事を用意していたが、今回は開設までの過程を失敗談も含めて語ってもらうことで小松KABULETの魅力がより伝わると考えた。
 プロ野球の名選手であり、名指導者であった故・野村克也氏の語録に「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」がある。勝ち=成功、負け=失敗に置き換えればどうだろう。あるプロジェクトがたまたま成功することはあっても、失敗するプロジェクトには共通の理由があるといったところか。
 雄谷理事長は「Story、History、Philosophy がない事業は必ず行き詰る」と言う。本プロジェクトにおける3つは何だったのか。お2人の真摯な言葉をお読みいただきたい。