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寺子屋をふたたび~お寺が直面する課題と地域の取り組み~
当協議会の会員である一般社団法人日本仏教協会の中根善弘代表理事の前職は設計士です。茨城県のお寺の設計に携わったのがきっかけで、真言宗の僧侶となられました。そして2年前、全国各地のお寺が運営・維持の難しさに直面しているなか、日本仏教、寺院、僧侶を守る活動を行うため日本仏教協会を設立。お寺が本来もっていた地域貢献の役割を見直し、地域住民にとっての身近な存在として再生させることを目指しています。そのためにできること、すべきことは何か、中根代表理事にお聞きしました。
お寺の収入の減少
現在、全国にあるお寺の数は約7万5,000、うち実際に活動しているのは――無住職や住職が兼務しているお寺も含めて――4万5,000くらいでしょうか。誰も手入れをすることなく、朽ち果てそうなお寺は3万くらいあるといわれています。
多くのお寺が直面している問題は檀家制度の崩壊です。お寺の主な収入は葬儀や法事の際に檀家から受け取る「お布施」や「護持費」ですが、地方の多くのお寺では檀家の数は30軒くらいであり、お寺の収入が減って維持が難しくなっているのです。
再生のためにできること
高齢化のピークは2020~2040年の間に来るといわれています。その後は亡くなる方が減っていくわけですから、葬儀も少なくなっていく。そもそも葬儀をやらない家も増えているので、お寺の存在価値がますます問われるようになるでしょう。そのために何をすればいいか。行政と連携して以下のようなことができないかと考えています。
子育て・教育 境内に保育所をつくる、学童保育を行う、塾を開く、などかつての寺子屋的な役割を復活させたいと思っています。地方ですと、たとえば親御さんが車で子どもを塾に送っていくこともありますが、近くのお寺で勉強を教えてもらえるのであれば、負担が軽くなりますし、地元であれば安心でしょう。地域の高齢者がシニアクラブの場としてお寺を使っていただければ、ボランティアで子どもにそろばんや習字を教えてくださるかもしれません。読み書きそろばん。手の動きは頭の回転にもよいので、高齢者にとっては認知症の予防にもなるでしょう。
緊急避難所 人手が足らず、境内の手入れが思うようにできないお寺があること、高台にあるお寺が多いことから、駐車場を自然災害の際の避難場所にすることも可能です。自宅を離れて体育館で避難生活を送るよりも、自家用車のなかの方がよいという人もおられます。境内で炊き出しができますし、行政の備蓄庫を設置しておく場所もあるので、いざというときには住民の皆さんにお寺まで取りにきていただける。それが難しい人にはお寺からもっていく。住民への物資の配給を地域のお寺が拠点となって行えるのではないかと思っています。
イベントの開催 女性向けのヨガ教室やコンサートを開催しているお寺が増えています。また、仏教に興味がある男女に集まってもらってのお見合い「寺婚」の開催も。昨年、とあるお寺では男女各20人がお互いに共通の話題で盛り上がりました。
移住者相談 寺の人間は地域のことをよく知っているので、移住者の方の相談も受けられるのではないでしょうか。地元に入っていくための助言や不安の解消もして差し上げられると思います。
リモートワーク 当協会では企業研修を行っています。みんなで座禅を組む、お経を息を合わせて読む、といったことを通して忍耐力や協調性を養っていただきます。そのため経営者の方は「従業員の我慢が足りないから、それを身に着けさせよう」と申し込まれるのですが、私たちは「仏教は何かを我慢するためにあるものではありません」と申し上げています。
コールセンターやホテルなど接客業に携わっている方々は苦情対応が多いので、離職率が高いといわれています。そうしたサービス業に携わっている方々に対して、私たちは「苦情をよこす人の気持ちもわかってあげましょう」と伝えています。そして、(クレーマーに対しても)「そういう人もいるんだな」くらいに受け止めて、 仕事は仕事と頭を切り替える、瞑想をして忘れる、趣味に没頭するといったことを勧めているのです。
そうした研修は社員のメンタルヘルスにもお役に立てるでしょう。お寺でリモートワークをしていただければ社員の方々の効率も上がるのではないでしょうか。企業とお寺は相性がいいと思うのです。
一般社団法人日本仏教協会のHPはこちら。→ https://nihon-bukkyou.com/