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国を超えた関係人口をつくっていきたい~外国人材を受け入れるために必要なこととは~

深刻な人手不足が日本の各地での課題となっているなか、旅行会社として外国人材の受け入れ、育成に携わっているのがエーペックス インターナショナルです。同社の相談役であり、行政書士でもある松本さんに、現状ではどのような課題があるのか、それを改善するためにはどうしたらいいかという視点から語っていただきました。(写真上は介護施設に勤務するネパール人)

松本 直哉(まつもと なおや) さん
エーペックス インターナショナル株式会社相談役
行政書士松本事務所 代表行政書士
大学卒業後、大手私鉄系旅行会社に入社。5年勤務後、日本語教師養成学校に入学、オーストラリア・ベトナムにて英語語学研修、日本語ボランティア他にて1年程滞在。帰国後、エーペックスインターナショナル㈱に入社、現在に至る。途中、コロナインフルエンザにて旅行産業が壊滅的な打撃を受けたため、社員派遣や特定定技能外国人事業に取り組む。このコロナ渦にて行政書士の必要性を感じ、行政書士試験に合格し、兼業として行政書士松本事務所を設立。
――御社の業務内容を教えてください。
弊社は1975年に設立されたアジアに特化した旅行会社です。主な業務は、①アジア全域における海外旅行の地上手配のための予約・契約営業、②旅行商品企画およびアジア各方面のユニット商品の提供、保険加盟業務、③中国、ベトナム、マカオの航空会社の日本における予約発券代理。現在はタイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマーなどに現地法人を有するほか、アジア各国の会社と提携しています。
――旅行業務と同時に外国人の受け入れにも取り組まれているとお聞きしています。
人口減、少子高齢化で日本における働き手不足が深刻化するのを見据えて、2019年4月1日に新設された特定技能外国人材を受け入れる事業に取り組んできました。私が行政書士の資格を取得したのも、外国人の在留資格に関する申請、変更、更新などの手続き代行や、それに伴う書類作成のサポートを行うためです。地方の旅館への人材紹介・支援などを行ってきましたが、直後に新型コロナ感染拡大により、旅行業界には大きな打撃となりました。コロナ禍が明けた後も、アウトバウンド、インバウンドを取り組んでいるだけではだめだということで、各地での受け入れ事業を再開しています。
――外国人技能実習生と特定技能外国人材の違いは何でしょうか。
前者は日本で一定期間、技能や技術を習得し、母国の発展に貢献することを目的にOJT(職場での実践的な訓練)を通じて技能を移転する、すなわち日本で取得したスキルをもって帰国し、自国に役立ててもらうというものです。後者は日本における人材が不足している産業分野で活躍してもらうためのものです。労働条件は日本人と同じ、かつ同一労働、同一賃金が原則となります。

――外国人技能実習制度についてはいろいろな問題が指摘されています。
技能実習生が人手不足の労働力として扱われるのが大きな原因です。受け入れた企業が本人のパスポートを取り上げる、賃金を支払わない、(技能実習生のため)転職できないので失踪者が続出するなど。こういった問題に対して、日本政府は2024年に有識者会議で議論を行い、技能実習制度を廃止する方向での最終報告書を提出。新たに育成就労制度の新設を提言しました。外国人材を育成し、特定技能1号レベルの技能を習得させ、その分野の人材を確保することを目的とした新しい在留資格制度です(2027年を目途に施行される予定)。労働条件は特定技能外国人材と変わりません。
――特定技能制度の課題は何でしょうか。
特定技能制度では転職が可能であるとはいえ、就労して10カ月以内に辞める人が70%に上るといわれています。主な理由はコミュニケーションがうまくとれないこと。介護分野での離職率が低いのは、高い日本語能力が求められるからです。来日当初は(日本語能力が)高くなくても、現場で日本人と接することが多く、介護福祉士の資格を取得するために一生懸命、日本語を勉強するので上達が早い。一方、製造業ではどうか。ライン作業に従事する人は、業務で日本語を使う機会がないためなかなかうまくならない。そのため職場に馴染めず、転職しようとなってしまうのです。
――この問題の解決を外国人と受入企業に任せてしまうのはいけませんね。
特定技能外国人材を受け入れる際には、特定技能外国人登録支援機関の仲介が義務づけられています。企業に代わって、特定技能外国人材が安定かつ円滑に活動できるよう、支援計画の作成・実施を行うのが目的です。同機関には10項目の義務的支援――事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保・生活に必要な契約支援、生活オリエンテーション、公的手続きへの同行、日本語学習の機会提供、相談・苦情対応、日本人との交流促進、転職支援、定期面談・行政機関への通報――が定められています。
弊社も特定技能外国人登録支援機関として上記の項目を担っており、日本語学習も独自に行っています。ただし受入れを検討している企業には、登録支援機関への管理費、日本語教育のための費用も発生するので、「日本人を雇うより高い」と言われることがあります。しかし、いままで通りの求人をして、人が集まるのかといえば、厳しいのが現状です。
――日本語教育については、自治体の国際交流部門や地元のボランティア団体にできることは少なくないと思います。
私たちは富山県滑川市の介護施設にネパール人とカンボジア人を特定技能外国人材として派遣しているのですが、私たちだけでは日本語支援に限界があるので、市役所からサポートをいただいています。
滑川市瀬羽町は、北前船も寄港していた、かつての宿場町であり、街並がベトナムの世界遺産の港町ホイアンと似ていることから、2010年に「ベトナム・ランタンまつり in なめりかわ」という夏祭りが開催されました。いまでも「なめりかわランタンまつり」として続いています。瀬羽町はランタン祭りで有名で、夏の夜に500個の色鮮やかなランタンが飾られ、情緒あふれる幻想的な灯りに包まれます。当日は米麺フォーなどのベトナム料理の出店あり、ベトナム民族音楽コンサートあり。このように地域全体で外国人を受け入れる雰囲気をつくっていけば、「就労して10カ月以内に70%が転職する」という現状も改善できるのではないでしょうか。
――松本さんは空き家問題相談員の資格もおもちですね。
上記の10項目のひとつ、「住居確保・生活に必要な契約支援」として、地方でとくに増えている空き家を外国人材に提供できないかと考えて取得しました。空き家の利活用は地域の活性化にもつながるので、相乗効果が期待できます。
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――たとえば高知県では物流、とくにトラックとバスの外国人ドライバー雇用の期待が高まっていると聞いています。
2024年3月に自動車輸送産業が在留資格の特定技能に加えられました。それには運転補修、鉄道とバスの運転手も含まれることから、2024年11月にインドネシアの特定技能をもつ労働者を海外に送り出す機関と、日本の受入れ機関である高知県の運送会社などとの意見交換が行われました。この分野における外国人の受け入れは不可欠です。ただし、公共交通は乗客の命を預かる職種なのでハードルは高く設定されています。まずはコンビニ向けの小型トラックから始めたらどうかと運送会社に提案しています。
――国を超えた関係人口づくりともいえますね。
まずは観光を通して日本の地方を訪れ、その土地と人を知り、ここで働こうと思ってもらう。国同士の関係人口を増やしていき、それが定住人口につながる流れをつくっていきたいと思います。(聞き手 芳地 隆之)