(ラストのウクレレパイナの演奏では舞台と会場の区別もなく大盛り上がりで大団円を迎えました)

毎年恒例の社会福祉法人佛子園主催のクリスマスパーティが12月17日、Share金沢の「S-Stadium」で開かれました。今年のテーマは「昭和レトロ」。舞台は映画『浅草キッド』(ビートたけしさんの浅草での下積み時代を描いた自伝小説が原作)がモチーフです。浅草ロマンス座というネオンが設置された舞台の書き割は立体感を出したペンキ絵となっており、これまではスタジアムの外に設置されていた出店が今年は中に入って、まるで縁日のように並びました。

ここにいたるまでにはいろいろと改良があったそうです。佛子園理事の清水愛美さんは、

「開催の数日前、(佛子園の雄谷良成)理事長より、出店のセットにダメ出しされました。お店とお店の間が空いていて通路も幅が広すぎるといわれたのです。本来は狭いところをお客さんが互いによけながら歩くような場所だろうと。お品書きは、どの店のも同じようなデザインにみえる。字体も模様もぜんぜん違うものでないとおかしいんじゃないか。ということで、お店の数を増やして並べ、通路も細くし、お品書きも作り変えました。

(木の枠にもこだわりが感じられる。「ちょっとよって社長」もおかしい(笑))。

ここまでこだわるのが佛子園のイベント。

職員の皆さんは福祉の現場で一人ひとりと丁寧に付き合って、その人が何を求めているのか、元気になるにはどうしたらいいのかを考え、実践しています。クリスマスパーティでもその姿勢は変わりません。利用者さんやその家族、地域の方々、関係者の皆さんらに「1年間、ありがとうございました」という感謝の気持ちをどのように伝えるか。本気で考えるから、舞台の演目に手を抜かないし、会場のレイアウトやデザインにも妥協しないのです。

オープニングの法人アトラクションでは昭和の浅草を思わせる飲み屋の寸劇から、若者たちの踊りと歌へ(ケツメイシの『はじまりの合図』)。飲み屋の壁が外されると、ずらりと並んだ楽団員が映画で使われた“King & Queen”を演奏し、佛子園の雄谷良成理事長、清水愛美さん、同理事の岸本貴之さんが『浅草キッド』の大泉洋、柳楽優弥ばりのタップダンスを披露しました。そこに先ほど清掃員の出で立ちだった皆さんが再登場してデッキブラシでストンプを。オープニングから一気に会場のテンションは上がっていきました。

(若い頃、こんな格好をしておりました、今のおじさん、おばさんたちは)
(皆さん、この日のために特訓してきたそうです)
(古くて、新しい。見ている方も自然にリズムをとりたくなる絶品のタップダンス)
(デッキブラシでストンプ、軽快です)

「これが大人の遊び」と雄谷理事長は言います。

「このくらいでいいか、と妥協したとたんに遊びは面白くなくなる。本気でやるから楽しい。それは実は仕事と同じ。遊びができない人は仕事もできないんじゃないかな」

同理事長は以前、ボスとリーダーの違いについてトヨタ自動車の豊田章男・前社長の言葉を紹介したことがあります。

ボスは仕事を責務にし、リーダーはゲームにする。

仕事を責務と思ってしまうと、私生活と対立してしまいます。ワーク・ライフ・バランスは「仕事と私生活の両方を充実させることで、相互によい効果を生み出す」ことですが、そこをもう一歩踏み込んで、仕事と私生活の境界を限りなくなくしてみる。双方を「遊び」で媒介できれば、人はよりハッピーになれるのではないでしょうか。「ごちゃまぜ」は人と人との関係だけでなく、ひとりの人間の心のもちようにも当てはまると思うのです。

佛子園法人アトラクションの歌もダンスもタップも演奏も佛子園のスタッフとその関係者の方々です。集まってくださったお客さんの多くも顔見知り。だから舞台に立つ人がこの日のために懸命に練習を重ねてきたことを知っています。他の演目を披露してくれた方々もそうですし、今年のGOTCHA !! RALLYから佛子園のイベントに出演している「よしもと住みます芸人」の皆さんも顔なじみで地域の仲間という感じなのです。

(左から石川県住みます芸人のぶんぶんボウル・まーしさん、富山県住みます芸人の吉田サラダさん、石川県住みます芸人の月亭方気さん、同トマト王子さん、同ぶんぶんボウル・とよさん)
(右上:むかし懐かしいチンドン屋さん・笑売繁盛屋の皆さん、左上:柿木太鼓の皆さん、下:遊具メーカー大手ジャクエツの社員の方々によるジャグリング)
(JOCA南部のメンバーは旧鳥取県立法勝寺高校の応援団に扮し、『The Greatest Showman』に合わせた振付を)
(左上:YOSAKOIソーランチーム「粟津おすえべ花吹雪」の面々、右上:デュオ「オリーブときのこ」、下:金沢商業高校吹奏楽部)

本気で相手を元気にしようとする「ごちゃまぜ」の人々は、そのための技術を身につけることも厭いません。「ぼくたちは専門家じゃないから」という言い訳はなし。だって「ごちゃまぜ」だから。それが佛子園のクリスマスパーティからも伝わってきて、その結果、イベント会社ではつくることのできない自前の素敵な空間が生まれました。

「ごちゃまぜ」は何にでも対応できる。エンターテイメントとも相性抜群であることを教えられたクリスマスパーティ。来年のテーマも考え始めているとのこと。雄谷理事長は「1年をかけて準備し、この一瞬で終わる。それがいいんだ」と言って、にやりとされていました。