なぜメタバースに?

日本知的障害者福祉協会の北陸地区が今年の就労系の大会の主催者になったのがきっかけです。この大会では毎年、障害者の就労でつくった商品をリアルマーケットで販売しているのですが、会場が札幌市や仙台市、あるいは福岡市など規模の大きな都市であれば集客が見込めるものの、今回予定している福井市ではなかなかお客さんが集まらないのではないかーーそういう懸念がありました。そこで北陸地区代表を務める雄谷良成・理事(当協議会会長)が、自身が理事長を務める社会福祉法人佛子園の施設である日本海倶楽部がメタバースに出店した経験や、メタバースと福祉の融合を進めようとしているアクロスロードの津田社長との意見交換を踏まえて、全国大会をメタバースで開催する運びとなったのです。

本来ならば全国から物を福井に集め、テントなどを設営し、研修会の会場準備をするところ、メタバースの開催によって輸送や移動のコストが節約でき、理事や事務局が中心となっていた従来の大会に利用者さんたちも気軽に加われることになりました。ちなみに当日は大寒波で北陸地方は大雪に見舞われており、リアル開催をしたといしても大きな弊害が生じたと思われます。

アクロスロードの津田さんが講演で語られたように、「メタバースの特性を考えると、リアルに課題がある方が新しい発想をしやすい」のでしょう。

ポスト・コロナへ

さて、上記の雄谷理事と津田社長、そしてよしもとセールスプロモーションの山地克明取締役も加わった鼎談では冒頭、以下のデータが示されました。

(出所)ニッポンの介護学:「交流・外出」しない高齢者は6年後の死亡リスクが2倍以上!孤立してしまう理由とは

上記の表によると、はじめの1000日間は耐えられるが、それ以降は死亡率が一気に高まり、6年後には「孤立・閉じこもり傾向なし」の高齢者に比べて2.2倍にまでなるというのです。3年前から始まったコロナウイルス感染拡大によって、人との交流を絶たれた高齢者はこれまで余力で生活してきました。しかしながら、従来のような生活を続けている高齢者にとっての本当の危機が訪れます。

しかしながら、これまで「コロナだから」と外出や人との出会いを控えていたことが癖になり、自分から誰かに会いにいくことが「めんどくさい」と思うような世の中になっている。これでは生存曲線が下がってしまう一方です。

この「めんどくさい」をいかに退治するか。『「めんどくさい」がなくなる脳』(加藤俊徳著)によると、「めんどくさい」は感情ではなく、脳の生理反応であるから、「めんどくさくない」脳もつくることができるとのこと。脳には大きく8つの領域(思考系、感情系、伝達系、理解系、運動系、聴覚系、視覚系、記憶系)があり、運動系が苦手な人はグランド10周といわれたら「めんどくさい」となるし、伝達系が苦手な人は何かを相手に伝えることが「めんどくさい」となる。「めんどくさい」の原因がわかると、それを得意な領域でカバーすることで、「めんどくさい」をつぶしていけるというのです。

笑いのチカラ

「それでもめんどくさいという『キング・オブ・メンドクサー』はどうするか(笑)」。そこで話は「笑い」に移っていきます。下表をご覧ください。

(出所)「笑うと長生き!世界初の大規模疫学調査報告」(山形大学医学部)
(出所)「笑って認知症を予防できるか」福島県立医科大学医学部疫学講座・大平哲也教授

「ほとんど笑わない」人の死亡率が「たまに笑う」「よく笑う」(ゲラゲラ笑わず、くすりとするだけでも「笑いがもたらす効果」は発揮されるという)よりも2倍以上高くなっています。笑いは認知症予防の役割も担っており、ほとんど笑わない人の認知機能の低下は毎日笑う人の2倍以上になるとのこと。また、笑うとNK(ナチュラルキラー)細胞の活性化させるので、がん細胞の増殖も制御するといわれています。吉本興業でもお笑いをよく見ている人と見ていない人の血流を調査したところ、前者の方が活発で集中力と記憶力があるとの結果が出たそうです。

笑いのもつ力には3つあります。①笑う力、②笑われる力、③笑わせる力。うち②は苦手な人が多い。どうしても「笑われたくない」と思ってしまうから。とくに高齢者の男性――国会議員、自治体首長、高級官僚、元大手企業の管理職など――に笑われる力が欠如していることが多い。芸人さんのなかでも、素の自分をいじられると怒る人もいるとか。でも、笑われるのは人と違うことをするからであって、他者からどう見られているかを知ること=本人のメタ認知が可能になります。だから笑われる力のある人は人を笑わせることができる。何が面白いかがわかるから。

上記の笑いのチカラにはさらに2つが加わります。「笑いをみつける力」と「笑いを伝える力」。芸人さんでいえば、前者はインプットで後者はアウトプット。とりわけアウトプットに腕前が試されます。

これは芸人さんだけの話ではありません。あなたの職場にもいませんか? あまり笑わない人。

そういう人はいじってみましょう。ひな壇に座る若手芸人が明石家さんまさんにいじられて育っていくように。

GOTCHA !! RALLY 第2弾

さらに話は今年のGOTCHA !! RALLYへ移っていきます。昨年は室蘭市で「ごちゃまぜ」の居場所づくりをしているゴチャマーゼ中島で障害のある人や高齢者がサポートする料理「トンギスカン」を全国のみんなで食べて盛り上がりました。ゴチャマーゼ中島の活動、トンギスカン、そしてGOTHCA !! RALLYのルールについては以下をご覧ください。

GOTCHA !! RALLY エントリー開始

そして本番の様子はこちらを。

GOTCHA !! RALLY 第一弾が終了~温かいお金を回す仕組みを目指して~

今年は沖縄を発信地とします。そして吉本興業が地方創生の一環として、全国47都道府県に派遣している「住みます芸人」の皆さんを各地の拠点にお呼びできればと思っています。全国でWEB空間を通して同時に食べて、飲んで、笑って、元気になってコロナ禍での引きこもりを乗り越えていきます。

現在、沖縄では「トンギスカン」に匹敵する、あるいは陵駕するメニューを開発中。今年はメタバース空間で沖縄メニューを販売する予定です。可能性はさらに広がっていきます。

どうぞお楽しみに。