このままでは896の自治体が消滅しかねない――2014年5月に有識者グループ「日本創成会議」が発表した論文、いわゆる「増田リポート」は全国の地方公共団体に衝撃を与えた。同リポートはグループの座長を務める増田寛也氏( 元総務大臣・現日本郵政社長)の名前からとられたものだ。同氏の著書『地方消滅―東京一極集中が招く人口急減』(中公新書)はショッキングな日本の未来図を描きつつ、地方に人々がとどまり、希望どおりに子どもをもてる社会へ変わるための戦略を考えるものであった。これを受けて、政府は「地方創生」政策を打ち出し、人口減対策を盛り込んだビジョンと総合戦略づくりを自治体に求めた。
 それから10年後の今年の4月24日、新たに組織された人口戦略会議(議長=三村明夫・日本製鉄名誉会長)は、2020年から50年までに全国1729自治体の4割にあたる744自治体で20~39歳の女性人口が50%以上減り、消滅する可能性があるとする分析結果を公表した。2014年の分析に比べると、「消滅可能性」に該当する自治体の数は減ったとはいえ、10年前に比べ、世の中の受け止め方は淡々としている。
 この10年間で現実を見せつけられ、ぐうの音も出ないと解釈できるのかもしれない。年初の能登半島地震の災害支援で明らかになったのは、これまでの焼き直しではにっちもさっちもいかなくなっているということだ。創造的復興の視点から、この10年間に取り組まれてきた地方創生を自治体、事業者、国など、それぞれの立場から振り返りながら、今後を展望していきたい。