学生のころ、もう少し勉強しておけばよかった――こうぼやいたことがある方は少なくないだろう。だが、本当に勉強が必要なのは社会人になってからだと実感している人も多いはずだ。学びは世の中に出て働き始めると、より切実さが増すのである。
 「地方創生から10年」の連載インタビューの5回目は高知大学の受田浩之学長に登場いただいた。同大学では「県民総博士計画」構想を掲げている。突拍子もないように聞こえるかもしれないが、地域における大学の役割、なにより地方がこれから生き残っていくことを考えると、なるほどと得心する。
 リンダ・グラットン著『ライフシフト』は、人生100年時代において、人は学校→仕事→リタイアの単線ではなく、仕事の途中で研究活動に取り組んだり、リタイヤ後に社会貢献を始めたり、といった複線の生き方を提唱している。人間には流動性知能と結晶性知能があるそうだ。前者は、新しい環境に適応するために新しい情報を獲得し、処理する能力。とくに若い世代が有する。後者は、個人が長年にわたる経験、教育や学習などから獲得していく能力。こちらは高齢の方が活きてくる。
 学びは年齢を重ねるごとに楽しくなっていく。「末は博士か、大臣か」。いまでは死語になったこの言葉が、地方創生を通して復活したらうれしい。