何だか調子がすぐれないという感覚を抱いたことのある人は、少なくないのではないか。医療機関で診てもらっても「とくに変わったところはありません」といわれるのだが、体は重く、憂鬱な気分というような。
 その原因は、生活のなかに自然が足りていないからだと説くのが本書である。
 自分が自然欠乏症候群に陥っていないかは、第1章「都市生活と健康」に記されている7つのケースを読んでチェックしてみてほしい。スポーツをしていない、面白いと思わないのにゲームを続ける、室内にばかりいるので昼夜の区別がつかなくなっているなど、都会に暮らす人には、いずれかに当てはまるのではないだろうか。
 その背景として本書が挙げるのが、身の回りの環境が、かつての自然からコンクリートや鉄、化学合成物質に囲まれたものになっていること。さらに、加工食品に含まれる合成添加物の摂取や、電化製品が発する電磁波、パソコンやスマートフォン、テレビのブルーライトの影響、日の出と日没のリズムに反するような生活パターンなどである。
 とはいえ、電気のない生活に戻ることはできない。食事は地産地消が理想だが、なかなか難しい。では、どうするか。本書は、上述のような生活への警鐘を鳴らすだけではなく、処方箋も示す。まずは第3章「自然欠乏症候群」の7つのチェックリストだ。日の出と日没を意識した生活を心がけ、静寂や自然の音などを感じやすい場所で活動し、日常的に森林浴や日光浴などをする。できれば長い通学・通勤時間も避けたい。できるところから着手し、少しずつ広げていけばいいだろう。
 自然とは、人間の外にある世界だけではない。とりわけ東洋医学では、体は小さな自然界と捉えられる。万物はそれぞれが単独で存在するのではなく、「陰」と「陽」という相反する形で存在し、お互いに影響し合って消長するという「陰陽思想」と、あらゆるものは「木火土金水」で成り立っているという「五行思想」を合わせた「陰陽五行説」が、その一例だ。
 日本列島は東西の幅が狭いため河川の長さが短く、傾斜が急な厳しい地形を早く流れる。そのため、ひとたび大雨が降ると氾濫する。また、活火山が多いため、たびたび噴火や地震に見舞われる。私たちにとって自然は、美しさや癒しを与えてくれると同時に、畏れを感じさせる存在でもある。
 そうした自然観を含めて、自然が現代の私たちには足りないことを本書は気づかせてくれる。(芳地隆之)