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今月のおススメ本は、樺沢紫苑・田代政貴著『感謝脳』飛鳥新社
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感謝脳とは何かをいきなり説明するよりも、感謝脳にたどり着く3つのステップを説明した方がいいだろう。①は親切への感謝。「何かをしてもらったら、ありがとう」。いわば行為に対するものである。②は日常への感謝。いつでも水、電気、ガスが使える、トイレで用を足せる、お風呂に浸かれるなど、普段は当たり前のようにそこにあるが、誰かのおかげで存在していることのありがたさである。「ありがとう」の反対語は「当たり前」といったのはマザー・テレサだそうだ。そして③は逆境への感謝。「何が起きても、ありがとう」。理不尽なことが起こっても、それは自分にとっての大事な試練なんだと考え、立ち上がれる姿勢である。感謝脳は③のレベルなのだが、本書はそこに達するまでのプロセスだけでなく、「ありがとう」が身体や心にどのような影響を及ぼすかを示している。
褒められたい! と思ったら人を褒めること 知識を身につけたい! と思ったら教える側になること、 人から好かれない! 愛されたい! と思ったら人を好きになって、愛すること。「自分はこんなにいいことをしているのに褒められない」と思っている人は「だから他人を褒めてやるものか」となってしまう。「たくさんの知識がほしい」と思っている人は「自分は教えてもらう側だ」となるだろう。しかし、そう思っている限り、人は褒められないし、知識を得られない。2人の著者は「与える」ありきだという。「見返り」は求めない。その姿勢の方が結果として得るものは大きく、それも感謝脳のおかげであることを、科学的な根拠をもって説明する。
本書は感謝日記をつけることを奨励する。今日、どんなことに感謝したかをメモするのである。最初は他者からの親切などを綴ろうとするが、いつも誰かから何かを特別にしてもらうこともないから、筆が止まる。そこで目を身の周りに向けていくと、毎日、食べるものがあること、話す相手がいること、あるいは雨露を凌げる屋根のある家で眠れることなど、日常の暮らしを送れることへの感謝がふつふつ生まれてくるのである。するとそれが生きる力となり、たとえば病気の人は回復傾向に向かう。セロトニンやオキシトシンといったリラックス、癒しの物質がたくさん分泌され、リラックスの神経である「副交感神経」が優位になるからだ。身体が回復モードに切り替わるのである。身体が回復→感謝ではなく、感謝→身体が回復。「ありがとう」が先なのだ。まずは「ありがとう」を口にすることから始めてみよう。あなたが変わることで、あなたの周りも変っていくだろうから。 (芳地隆之)