Voice
強い経済の構築によって地域未来戦略を進める~黄川田仁志・内閣府特命担当大臣(地方創生)インタビュー
地域未来戦略は、地方への投資を呼び込み、地域ごとに戦略的な産業クラスターを形成することで、地域経済の付加価値向上と「強い経済」の構築を目指す政府の国家戦略です。
地域における事業の種を見つけて育てていくことを、基礎自治体だけに任せるのではなく、国や都道府県が連携して推進する。日本全体で取り組むべき課題であることを改めて実感させられる、黄川田仁志・内閣府特命担当大臣へのインタビューです。ぜひお読みください。
黄川田 仁志(きかわだ・ひとし)さん 東京理科大学卒業。米国メリーランド大学大学院修士課程終了。専門分野は環境学、生態学、海洋学。環境コンサルタント、国連環境計画北西太平洋行動計画地域活動センター主任研究員などを経て、2012年衆議院議員初当選、現在6期目(埼玉3区選出)。外務大臣政務官、内閣府副大臣を歴任し、2025年10月より現職(内閣府特命担当大臣(地方創生)/地域未来戦略担当)。
聞き手 :松 田 智生( 株)三菱総合研究所主席研究員(、一社)生涯活躍のまち推進協議会理事
構 成 : 芳地 隆之( 一社)生涯活躍のまち推進協議会事務局長
好事例を面的に広げる
松田 高市内閣で地域未来戦略担当大臣としてご活躍されていますが、2015年から開始した地方創生の成果と課題についてお聞かせください。
黄川田 2014年にまち・ひと・しごと創生法が制定されて以降、地方創生の交付金をはじめとした支援を通じて、各地で地方創生に向けた取組が行われ、地域によっては人口の増加や経済の活性化、生活環境の整備など、様々な好事例が生まれました。たとえば、子育て世帯の経済的負担の軽減や子育て世代の就労支援等を進め、合計特殊出生率の向上や転入超過を実現している事例、道の駅に地域のスーパーや交流拠点を整備し、その周辺に保育園、小学校、介護施設など、生活サービスを集約するとともに、村営のコミュニティバスを運行することで、住民の暮らしの向上が図られている事例などがあります。
一方、こうした好事例が面的な広がりにつながらず、人口減少や東京圏への一極集中の流れを変えるまでには至っていません。地方創生の取組は、成果が表れるのに時間を要する政策です。人口減少に歯止めをかけることは重要ですが、当面は人口減少が続く事態を受け止めた上で、経済・社会を機能させる適応策も考えなければなりません。また、地方から東京圏への人口流出の大半が若年層や女性であり、地方が生きがいややりがいを感じられる場として若者や女性に選ばれるよう、取組を進めていかなければなりません。加えて、住所地以外の特定の地域に継続的に関わる関係人口等の量的拡大・質的向上も重要と認識しています。
地方創生に関し、このようなフォローアップを行った上で今後の推進方策を整理し、昨年12月に「地方創生に関する総合戦略」を閣議決定しました。この戦略に基づいて、地方創生の取組をしっかりと進めてまいります。
松田 具体的にはどのような取組になるのでしょうか。
黄川田 高市内閣では「日本列島を、強く豊かに」すること、すなわち、47都道府県のどこに住んでいても安全に生活することができて、必要な医療や福祉、質の高い教育を受けることができて、働く場所があるような日本を目指しています。そのために何よりも重要なことは「強い経済の構築」であり、そのための地域未来戦略を推進していきます。
地域の特性に応じた「地域発のアイデア創出」を募り、これまでの地方創生の支援策や税制などの政策ツールを最大限活用しつつ、大胆な投資促進策と産業用地を含めたインフラ整備とを一体的に講じてまいります。そのことを通じた都道府県知事などとの協働により、地方に大規模な投資を呼び込み、各地に産業クラスターを戦略的に形成していきます。こうした産業クラスターの先進事例である、熊本のTSMCや北海道のラピダスにも視察に伺い、地域経済に与える影響の大きさを実感するともに、周辺の交通渋滞や産業人材確保の課題等についても伺い、道路、工業用水、鉄道など必要なインフラ整備や人材育成の重要性を感じました。
加えて、魅力ある地域資源を生かした地場産業の成長を支援していきます。地方には可能性を秘めた魅力あふれる地域資源が多数存在しており、「地方の伸び代」を最大限活かすために、「地場産業」の成長プランを強力に後押しし、その付加価値向上と販路拡大を支援するパッケージを検討します。
地域に視察に行くなかで、水耕栽培大豆による輸入作物の国産化や、地消している沖縄産バニラの外販を目指した生産農園の拡大等、魅力ある地域資源を生かした付加価値向上や販路拡大の取組を進める自治体から、今後の取組の参考となるお話を伺いました。また、将来的な人口減少に合わせた社会と経済の再構築が必要となるなかで、地域全体を「賢く整える」ことで地域の活性化を目指すスマートシュリンクの取組について岡山県美咲町とも意見交換を行いました。視察した自治体はいずれも目指すべき方向性を明確にした上で、目標を持って産業の核となる部分を作ろうとしており、こうした取組を後押ししていくことで国と県、各自治体に経済圏、クラスターができ、住民たちが生活や経済の基盤を作っていくことができると考えています。
人口減少という厳しい現実に直面する全国の自治体が、単に人口規模に依存するのではなく、地場産業の付加価値向上や販路拡大などを通じて、地域の稼ぐ力を高め、持続的な地域経済の成長を実現できるよう取り組んでいきます。その上で、自ら変革に挑戦する自治体に対し、単に個別事業を支援するだけではなく、企業投資や人材を受け止める基盤となるよう、地域構造そのものの再設計も後押ししていけたらと考えています。
このため、「地域未来戦略本部」の下、私を議長とする関係副大臣等会議を開催して、具体化に向けた議論を行っているところであり、「地域未来戦略」の「政策パッケージ」を夏までに取りまとめていきます。
-1024x768.jpg)
「ごちゃまぜ」のコミュニティづくりも推進
松田 大臣にご就任されて以降、積極的に地方創生に取り組まれておられるなかで、手応えはいかがでしょうか。
黄川田 高市総理から地域未来戦略担当大臣の任命を受け、直ちに、総理を本部長、官房長官と私を副本部長とし、関係閣僚から構成される「地域未来戦略本部」を設置しました。また、「地域未来戦略本部」の下に私を議長とする関係副大臣等会議を設置して、「地域未来戦略」のとりまとめに向けた具体的な取組を検討しています。
また、積極的に地方にも出向いて、半導体を中心とした産業の集積、洋上風力発電やデータセンターの整備を通じたGX・DX、スマート農業技術による持続可能な農業モデル構築、地域産品の産地拡大や高付加価値化等の取組を視察するとともに、各視察先では関係者のご意見をお伺いしています。視察や意見交換を通じて、それぞれの地域には付加価値を生みうる地域資源が存在し、関係者の創意工夫により様々な取組が行われていることを実感しています。こうした視察の成果も踏まえ、全国の各地域でそれぞれの地域が持つ伸び代を活かした、強い地域経済が実現されるよう、「地域未来戦略」をとりまとめていきます。
若者や女性が流出することが地方の課題としてあるなか、こども政策や若者活躍、女性活躍など幅広い担務を兼務する私が複眼的に取り組んでいくことで、より施策の実効性が高まるものと考えています。
松田 今後の地域未来戦略の加速に向けた自治体、企業、大学への期待をお聞かせください。
黄川田 地域未来戦略の検討・加速に当たっては、自治体、民間等の協力は必要不可欠です。このため、私を議長とする関係副大臣等会議には、経団連や日商、商工会議所といった経済団体、知事会や市長会、町村会といった地方団体にもオブザーバとして参加いただき、様々なご意見もいただき、議論を深めています。また、地域ブロック毎の「戦略産業クラスター計画」の検討に当たっても、ブロック毎に地域特性や戦略分野等に応じて、管内都道府県、市町村、経済団体、民間企業、大学、研究機関、金融機関構成員を中心に構成員やオブザーバで議論していくこととしており、連携しながら進めていくことを期待しています。
松田 住民主体の活動拠点となる地域の居場所(CCRC)のあり方についてはどのようにお考えですか。
黄川田 全世代・全員活躍型「生涯活躍のまち」(日本版CCRC)では、誰もが居場所と役割を持つ、「ごちゃまぜ」のコミュニティづくりを推進しています。
具体的には、小規模であっても年齢や障がいの有無を問わず様々な人々が集い、それぞれが持つ能力を希望に応じて発揮し、生きがいをもって暮らすことができる場(小規模・地域共生ホーム型CCRC)の整備を進めるため、関係府省庁とともに、今後の推進に向けた課題に関する議論を行ってきたところです。
昨年末に策定した「地方創生に関する総合戦略」(令和7年12月23日閣議決定)においては、人口減少を正面から受け止めた既存施設の活用等について検討し、地域の特性に合わせた導入の拡大のため、令和8年度に策定することとしているガイドライン(仮称)に沿った取組を支援するとしています。さらに、「生涯活躍のまち」(日本版CCRC)
の展開に向けた普及等事業を、令和8年度予算にも盛り込んでおり、2028年度までに全国で100カ所の小規模・地域共生ホーム型CCRCの展開を目指しています。
引き続き、「ごちゃまぜ」のコミュニティづくりを実現していくため、関係府省庁とも連携して取組を推進していきたいと考えています。
