先日、当協議会会員になっていただいた総合的な温泉開発企業である(株)エオネックスの吉岡直樹さん、野崎剛史さんとお会いし、同社の地域創生関連の温泉掘削事業について話をお聞きしました。

たとえば、 公益社団法人青年海外協力協会(JOCA) の各拠点施設について。安芸太田町(広島県)では事前の温泉調査の結果で湧出量が少ないだろうとの判断となりました。それをJOCAの雄谷会長に伝えたところ、「いや、大丈夫、出る」と。そして、いざ掘削をしてみると、深さわずか500mで湧出量317ℓ/分と予想以上のお湯が出たそうです。岩沼市(宮城県)では当初、掘削深さ1,500m、湧出量100ℓ/分、源泉温度30℃くらいを想定していたそうですが、実際には近隣の温泉にはないほどの量ならびに温度でした。南部町(鳥取県)では、20~30年前に温泉を掘ったものの断念したという経緯があったそうですが、安芸太田町同様に温泉調査からスタートし、拠点予定地を掘ると、湧出量56ℓ/分、源泉温度30℃という施設を賄うのに十分な結果でした。

吉岡さんいわく、「(調査予測に反して源泉を当てる)雄谷会長はもっておられます(笑)」。

エオネックスが社会福祉法人佛子園と最初に仕事をしたのは2006年の西圓寺(石川県小松市)。掘削に際して、西圓寺ではご近所に住んでおられた男性からしばしば苦情を言われたそうです。ただ、彼は単にクレームをぶつけているのではなく、この事業に関心をもっていることがわかったという吉岡さんたちは 真摯に向き合いました。その甲斐もあり、施設ができあがると、彼は毎日温泉に入ってから一杯飲んで帰る常連さんになったそうです。

輪島KABULET(石川県輪島市)はまちなかの空き家を改修して施設をつくるため、家と家の間に温泉を掘ることになりました。そのスペースはわずか7m。設置する 掘削櫓の幅は6mなのでぎりぎりです。当該箇所の両隣の一方は空き家だったのですが、もう一方は高齢の女性がおひとりで暮らしていたので、彼女の生活に極力支障を与えないよう細心のフォローを続けました。幸い「温泉ができるのを楽しみにしている」とおっしゃっていただき、施設ができたときにはとても喜んでくださったとのことです。

「技術者は温泉を掘る際、半年間から場合によっては約1年間、現地に張り付きます。掘った穴が崩れたり、ドリルが岩盤から抜けなくなったりなど、不測のトラブルに対処しなくてはなりません。心身ともにストレスが少なくない作業ですが、お湯が出たときの地域の方々の笑顔を見ると、それまでの苦労が吹き飛びます。それが私たちの仕事の最大の喜びでもあります」(吉岡さん)

今回、伺った内容の詳細は当協議会の定期刊行物『生涯活躍のまち』でご紹介する予定です。

(右から)エオネックス ジオエネルギー事業部 営業グループ リーダーの吉岡直樹さん、同営業グループの野崎剛史さん