6月29日(水)に標記のセミナーは「建築×福祉」というサブタイトルで開催されました。近畿大学建築学部/アンチエイジングセンター教授の山口健太郎先生からは、高齢者向け施設や住宅が時代とともにどのように変わっていったのか、大牟田市居住支援協議会・NPO法人大牟田ライフサポートセンター事務局長の牧嶋誠吾さんからは、「福祉は暮らし」という視点で取り組んでおられる居住支援とは何か、株式会社kyma 代表取締役の土用下淳也さんからは、人と人とが自然と交流するようになる建築とは、とそれぞれの視点で語ったきただきました。

山口先生によると、 ご自身が高齢者施設の研究を始められた2000年(介護保険がスタートした年)には、まだ介護が流れ作業的に行われている施設が多かったが、個人の個室を提供するところが増えたとのこと。とはいえ部屋に引きこもってしまったら困ることからグループホームが生まれました。さらには就労支援、保育園、レストランまで入った多機能をもった施設もできており、 今後の高齢者施設は、全国一律のものから地域ごとへの解を求めるものに変わると指摘。地域分散型、複合化、既存建物の活用がキーワードになるだろうということで講演を締めくくられました。

山口教授の資料より

牧嶋事務局長は、ある認知症の方が半分朽ちた家に住んでいる例を紹介しました。当時、大牟田市役所の職員であった牧嶋さんは、その方を「市営住宅に転居を」と役場で訴えたところ、持ち家だから困っていないとみなされたそうです。 少子高齢化、離婚率増加、虐待、DV、生活困窮、被災などが原因となって住宅の確保が難しくなった方々の問題は住宅政策だけでは解決できない。居住支援を暮らしの基盤として整え、分野を横断したまちづくりの大切さを強調されました。

牧嶋事務局長の資料より

土用下代表取締役は、ご自身が設計した先般オープンのJOCA南部・法勝寺温泉の事例を紹介しました。土用下さんは、人と人がおのずと交流するには3段階あって、まずは「遠くで見る」、次は「近くで見る」「挨拶をする」「談笑する」、そして「活動を共にする」のなかで、始まりの「見る」という行為を重視した建物のつくりについて説明いただきました。

多角的かつ中身の濃いお話は、2時間のセミナーでは収まらないものでした。今後は個別のテーマでの勉強会や研修を企画してまいります。皆様からのご意見もいただければ幸いです。