昨日、試写会がありました。東日本大震災からコロナ禍の現在まで、牡蠣・わかめ・ホタテ貝の養殖を営んでいた気仙沼市唐桑町の夫婦とボランティアの若者たちとの交流を描いたドキュメンタリーです。

10年以上にわたる時間の流れを追体験できるような作品でした。登場する人々の息遣いから唐桑の町の匂いまで伝わってくるような感覚になるのは、風間研一監督がじっくり長い時間をかけて、皆さんとの信頼関係をつくってきたからなのでしょう。私たちも監督と同じ目線になっているような気持になります。

多くの人たちを引き付ける「唐桑御殿つなかん」の女将さんである菅野一代さんは、唐桑に移住したいという人を受け入れる側の心構えを次のように語ります。

「安心して来て、ということ。その根拠がなくてもいい。(喜んで受け入れるという)気持ちがオーラとなって相手に伝わることが大切」

東日本大震災、夫と長女、三女の夫の海難事故、養殖業を廃業し旅館業に専念した後にやってきた新型コロナの感染拡大と、多くの苦難に見舞われましたが、その都度ボランティアで訪れてくれた若者たちや周りの人々と乗り越えてきた一代さんならではの言葉だと思いました。

その一代さん、悲しみを乗り越え、「これまでは(人を)受け入れる側だったけれども、これからは自分から(人に)会いにいく」と決意し、東京で開かれた『生活のたのしみ展』に「つなかん」のTシャツを出展し、トークショーにも登壇します。

観る人の多くが励まされる。そんな映画でした。劇場公開は来年2月下旬から。その際はぜひ劇場まで足をお運びください。