建物内を案内してくださったコプラスの田坂妙子さん(左)と前川かおりさん(右)

コレクティブハウスをご存知でしょうか。1970年代に北欧で始まった暮らし方で、女性の社会進出などに伴い、子育てを助け合ったり、家事の一部を共同して行ったりして、住民が孤立せず安心できる暮らしを実現するための住まいです。

不動産開発事業の総合コンサルティングサービスの株式会社コプラスは東京都町田市において、その「コレクティブハウス」と「コモン付き賃貸」という2つの住まい方を選べるコミュニティ型賃貸マンション「まちのもり本町田」を運営しています。かつては単身者向けの社宅だった建物をコプラスの企画提案によりオーナーの費用負担で改修。独立住戸(トイレ、バス、洗面台あり)とともに共有の大型のキッチン、バス、ランドリールーム、Wi-Fi完備(入居者負担なし)によりテレワークでも利用されているコモンルーム、さらには多目的ルームやゲストルームも備えられています。プライベート空間を大切にしながら、居住者同士の交流エリアが備わった住まいなのです。

「まちのもり本町田」の改修工事は2020年2月に完了し、翌月からコプラスがサブリースを開始しました。

「コレクティブハウス」と「コモン付き賃貸」の大きな違いは、前者は居住者組合と呼ぶコミュニティを結成し、建物の共用部分の一部占用エリアを持ち、自らが運営主体なって清掃、水道光熱費の費用負担を行って管理します。そのひとつひとつの約束事は多数決ではなく、合議制によって全員が納得して決めるという特徴を持っています。

後者は、一般のシェアハウスよりプライベート空間が確保されながら、加えて共有スペースも利用できます。深いつながりを持つか、浅いけれどつながりを持つか、その意識によって住まい方が選択されています。 取材当日建物内のコモンキッチンでは、有志の居住者によって作られたカフェサークルにより、カフェが開催されていました。この日は年配の男性と20代の若い男性がキッチンに立っていました。メンバーが自分たち用に昼食を作ったところ、大量に作れたらしく、覗きに来た他の居住者にも振舞われていました。そのなかでカフェメンバーと他の居住者が言葉を交わしていたり、コモンキッチンの外にある人工芝が敷かれたアトリウムと称されたスペースに置かれた、DIY好きな居住者達が作ったテーブルを囲んで歓談している光景も目にしました。

                    料理に腕を振るう男性陣
         お子さんも交えて、DIYでつくったテーブルで世間話。ペットもOK。

ひとりでふらりとコモンキッチンを訪れた葛本さんは都心のマンションを自宅兼オフィスにしていました。しかし、1年前のコロナ禍により社員をリモートワークさせるようになると、都心の高い家賃を払う必要性がなくなり、当初は海の見える湘南エリアで物件を探していたところ、この町田にあるコミュニティ型賃貸マンションという住まい方に魅力を感じて入居を決めたそうです。「リモートワークが浸透したからこそ、ここで生活できるようになったのだと思います」という葛本さんはキッチンに立つ若い男性と気さくに話していましたが、「住民のなかにはこちらが挨拶しても返してくれない人も少なからずいるので、もう少しコミュニティ型賃貸マンションの考え方を理解してもらう必要があるのでは?」と改善も話されていました。

                 新しい暮らし方、働き方を実現

この建物の居住者同士を繋げるのはコプラスの前川かおりさんです。コプラスがこの物件をコニュニティ型賃貸マンションとして運営することを企画した際、町田市に隣接する相模原市の相模女子大学にも協力を仰ぎ共同研究をスタートしました。前川さんは同大学生活デザイン学科の3年生として共同研究に参加したメンバーの一人で、卒業後その縁からコプラスに入社、そして現在自らがその「まちのもり本町田」の居住者になりました。

「『仕事とプライベートの境がなくなるんじゃないの?』と心配されるのですが、住民の方は声を掛けてくれる時に『今日はお休みの日だっけ?』なんて気にかけてくれます。住民間のトラブルについては特にありません。コモン付き賃貸の居住者の方は何かあれば私に連絡してくれますが、コレクティブハウスの居住者は組合があるので、自分たちで解決しようという姿勢が強いせいか、私に連絡が来ることはないですね」 そう語る前川さんに居住者の一人で、イラストレーターの女性が「今から壁にペンキを塗るので見に来ませんか?」と声を掛けてきました。

                     壁をピンクに

「まちのもり本町田」は73戸。部屋の構成は単身者向けの1K(25㎡)のほか、ファミリー向け1LDK(50㎡)、ルームシェアも可能な2DK(50㎡)となっています。単身者向けの住戸の中にはDIYが可能な部屋もあり、好みのリフォームが可能で原状回復工事が不要です。ちなみにペット共生を謳っているので、全室ペット飼育可能。現在では入居率が90%を超えているそうです。

全国各地で空き家問題は深刻の度合いが増しています。使わなくなった社宅の数も例外ではありません。少子高齢化のなか事業主にとっては空き家リスクとともに、単身世帯が増えるにつれて地域との関係が希薄になることで生じるトラブルも想定しなくてはなりません。

そうしたなかで、血縁関係がなくても助け合い、支え合うことによって安全で安心な暮らしを可能にする「コミュニティ型賃貸マンション」は課題を解決する方法のひとつになるのではないでしょうか。

なお、当ホームページにはコプラスの青木社長、田坂さん他スタッフの方へのインタビューも掲載しております。下記からご覧ください。

住まいが交流の場にも、居場所にもなる ~コプラスが進めるコミュニティづくり~