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笑いは信頼から生まれる~第3回”SAKE BEER NOTO”は”INTERNATIONAL”~
上記は終始、元気のよかった輪島市のドッジボールクラブの皆さん
10月25日(日)、石川県輪島市の輪島KABULETで「SAKEBEER NOTO INTERNATIONAL」が開催されました。輪島KABULETは、社会福祉法人佛子園が公益社団法人青年海外協力協会(JOCA)と連携して運営する地域の交流拠点です。
本イベントは今年で3回目。第1回は2024年5月。能登半島地震から約4カ月後のことでした。
「地域で食べたり、飲んだりする場所がなくなってしまったなか、『こんな時にお酒を飲んだりしたら不謹慎ではないか』という声もありましたが、町内会では『こんな時だからこそ、飲食できるイベントを開催しよう』ということになりました。これからみんなで復興に向けて頑張ろうと」
そう振り返るのは、輪島市新田町の町内会長、多賀美太郎さんです。
「佛子園の雄谷理事長を委員長とした実行委員会を立ち上げ、住民が手分けして避難所や仮設住宅にチラシを2,000枚、ポスティングしました。そして当日は約1,200人の方々が来てくださったんです」
第1回「SAKE BEER NOTO」の終わりの挨拶で、実行委員のおひとりが語った「いままで自分は楽しんではいけない、と思っていました。でも、今日は言います。楽しかった!」。涙も交じったその笑顔が忘れられません。
昨年は「子どもも飲んじゃうよ」というキャッチフレーズでの開催でした。
「公園やグラウンド、小学校の校庭などに避難所や仮設住宅が建てられ、子どもたちの遊び場がなくなってしまった。だから昨年は子どもが楽しめるものにしたのです」(多賀さん)
会場には金魚すくいや射的、お化け屋敷などが設けられました。目玉商品のひとつが「こどもびいる」。中身はリンゴ味のノンアルコール炭酸飲料なのですが、ジョッキに注ぐと泡も見た目もビールそっくり。だから「子どもも飲んじゃうよ」。
そして今年は「INTERNATIONAL」。金沢でもなかなか食べられない世界の料理を楽しんでもらおうという趣向です。

雰囲気は「オクトーバーフェスト」。ドイツのホワイトアスパラガスのオランデーソースやソーセージ各種、フランスのシュークルート(豚肉、ジャガイモ、ザウアークラウト、ソーセージのポトフ)、スペインのアロス アル オルノ(牛肉のパエリア)とソルミージョ アル アホ(豚肉のガーリックソテー)、タイのトムヤンクンとムービン(豚串焼き)、インドのナンとバターキチンカレー、台湾の魯肉飯、ネパールのパニプリ(サクサクの揚げ菓子にスパイシーな具材を詰めた屋台料理)、モンゴルの餃子(ボーズ)、ブラジルのシュラスコ、アメリカのハンバーガー、そして地元輪島市の海産物から洋菓子まで。飲み物もモンゴルのウォッカ(アルヒ)、台湾のドラゴンハイボール、韓国の生マッコリ、イタリアのグラッパ、地元石川県のクラフトビールも揃っています。

「輪島にはマクドナルドやケンタッキーフライドチキンなどのチェーン店もないので、地域の人にはことさら物珍しいし、うれしいでしょうね」
飲食だけではありません。会場横のゴッチャ!ウェルネスのスタジオでは、色とりどりの民族衣装の試着や太鼓の演奏も楽しめ、会場を挟んだ反対側では幽霊屋敷の「ホーンテッド・ハウス」。JOCAや佛子園の職員が迫真の演技で来場者に悲鳴を上げさせていました。



多賀さんは「こうしたイベントを開くことで、普段は家にこもりがちな高齢者に足を運んできてほしい」といいます。多賀さんとは幼馴染だという河井町祇園の藤森公二さんは、「男性はとくに仕事をリタイアすると、自分の居場所がなくなるケースが多いから」と。

藤森さんは44年間、和倉温泉の「加賀屋」に勤めた後、故郷の輪島市に帰ってきました。多賀さんもJRで和倉温泉駅の駅長などを歴任した後にUターンしたそうです。
「だから2人とも、ずっと地元にいる人より輪島の変化を感じられたのかもしれません」という藤森さんが気にかけているのは輪島大祭のキリコ。
「担ぎ手が不足して、輪島市の全町からキリコを出すのは難しくなっています。むかしは町内でキリコ当番があり、担当になると自宅にキリコを置いて、町民の皆さんを迎えました。そうした風習もなかなか難しくなってくるなか、輪島KABULETさんは新田町とまんなか商店街が共同で担ぐキリコを置かせてくれました」
自分が小さいころに盛んだった祭りが、だんだん小さくなっていく。人口減少と高齢化が進むなか、仕方がない面もあると藤森さん。だからといって祭りがなくなっていいわけではありません。
「“SAKE BEER NOTO”が住民の集う新しい祭りになってほしい。子どもが集まるのがいいですね。元気な子どもの声は、年寄りを元気にしてくれますから」

今回はあいにくの雨でしたが、集まった子どもたちは元気いっぱい。主催者挨拶に立った社会福祉法人佛子園の雄谷良成理事長が「雨になんか負けないぞ。みんなやるぞ!」と呼びかけると、「オー!」と大きな声。コール&レスポンスが会場に響きました。
元気に応えるのは輪島市のドッジボールクラブの子どもたちです。
「平日は18時から19時、週末は9時から12時まで練習しています」
コーチの方に聞くと、震災後は小学校の体育館が避難所になったこともあり、道路で練習していたそうです。石川県内には小学生のチームが11あるとのこと。
「ドッジボールはボールを相手に当てる競技ですが、一番盛り上がるのは、小さい子が身体全体でボールを受け止めるときなんです。敵も味方も頑張りを称える。それがドッジボールのよさですね」
なるほど。子どもたちが雨のなかでも一番元気だった理由がわかったような気がしました。「お父さん、お母さんの応援にも熱が入りそうですね」と聞くと、
「時々、親子混合チームで試合をします。ドッジボールって簡単そうに見えるけれど、実はとても難しいし、体力も使う。試合に出ると親御さんは子どもに無茶なことを言わなくなります(笑)」
輪島KABULETでは震災前から「まちビア」というフェスを開催してきました。それが震災後に「SAKE BEER NOTO」となったのは、輪島市の酒店「酒のたかた」の社長、高田雅文さんが「ビールだけでなく、酒も入れてほしい」と提案したからとのこと。いわば名付け親の高田さんは、輪島KABULETのプロジェクトが始まったころから、地域に居場所ができることの大切さを訴えてきました。
「震災で輪島市内のほとんどの酒蔵が被災してしまいましたが、再建を行政に任せているだけではだめ。民間のわれわれが復興の狼煙を上げよう、という雄谷理事長の提案に賛同しました」
人が集えば、まちは明るくなる。輪島KABULETがなかったら、輪島市は死んでいたかもしれない。そう語る高田さんは、雄谷理事長を「太陽のような人」と形容していました。

今回の司会は、富山県住みます芸人の吉田サラダさん。
2023年のGOTCHA!! RALLY(全国各地のごちゃまぜ拠点で生まれた逸品を、みんなで買って、食べて、応援する企画)以降、佛子園とJOCAのイベントでは、地元の「住みます芸人」の皆さんにMCなどを務めてもらっています。
「とんがった笑いよりも、地域のなかで生まれる緩い笑いを」と雄谷理事長。
吉田サラダさんは今年9月、自身の移住先である富山県氷見市で開かれた第60回北陸地区知的障害関係施設職員研究大会でも司会を務めたそうです。慣れないスーツ姿で。
そのことを雄谷理事長にツッコまれながら、吉田サラダさんも対抗する。会場の皆さんとも互いに知った仲。スベっても笑いになる。ちなみに閉会の挨拶でもサラダさんは言葉を「噛んで」しまい、会場からは「アンコール」の声。吉田サラダさんは「なんで挨拶にアンコールなの?」と困った顔をしながら、雄谷理事長が自分にツッコミを入れるときの物まね(似ていませんでした:笑)を披露しました。

雄谷理事長は、「笑いと信頼は同じ」といいます。安心してボケる。安心してツッコむ。吉田サラダさんも、雄谷理事長が「自分のキャラクターを理解してくれている」とわかっている。普通なら落ち込むようなスベリも、信頼できる人たちの前だから「やらかした」とネタにできる。
思えば、震災直後の第1回で「楽しんではいけないと思っていた」と語った方も、安心して楽しめる場所があったからこそ、あの笑顔を見せてくれたのでしょう。
SAKE BEER NOTO INTERNATIONALの会場に生まれた心地よい笑いは、そんな信頼関係があってこそのものだったのだと思います。

