ルキノ・ヴィスコンティの映画『山猫』でバート・ランカスター演じるイタリアの老公爵がこう語るシーンがある。
「変わらずに生き残るためには変わらなければならない」。イタリアが近代国家になろうとしていく19世紀後半、時代の変化と自らの地位の終焉を感じ取った男のつぶやきだ。
「新型コロナというウイルスが世界を覆ったパンデミックを経て、私たちの生活の何が変わったのか、何が変わらなかったのかを検証するべき。それによって生涯活躍のまちの目指すものが見えてくる」

今号に登場いただく前消費者庁長官の伊藤明子さんの言葉を受けて、冒頭のセリフを思い出した。
国土交通省出身の伊藤さんは内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局で地方創生の政策づくりにも関わっている。その当時、生涯活躍のまちの事業に取り組み始めたのが、社会福祉法人弘前豊徳会の阿保英樹さんだ。地元青森県弘前市に建てたサービス付き高齢者向け住宅の施設長として、第一期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」から現在まで、紆余曲折を経て到達した立ち位置について語っていただいた。阿保さんのお話からも、スタート当初から変わらないもの、変わったものが見えてくる。
 それが今号のテーマとなった。
「変わらずに生き残るためには変わらなければならない」。昨年亡くなったイラストレーター(のほか、グラフィックデザイナー、エッセイスト、映画監督など多彩な顔をもっていた)和田誠さんの著書『お楽しみはこれからだ』のサブタイトルにならえば、これは(映画の)名セリフである。