(上記写真)群馬県沼田市にある複合施設「SONATARUE(ソナタリー)」。(株)五井建築研究所が「ごちゃまぜ」の思想に共感した施主と一緒につくった。鉄骨造に木造が加わることで、温かみやヒューマンなスケールの空間になっている。「SONATARUE」とは地域に心のハーモニーがあふれ、人を繋ぐ場所、あなたらしさを追求できる場所にという思いから名付けた造語。

先般、石川県金沢市の東山地区に株式会社kymaが設立されました。金沢三大仏のひとつに数えられる丈六の釈迦如来立像を安置している蓮昌寺の山門から、まちなかへ続く通りの途中にある古い町家を改修した建物が事務所になっています。

         蓮昌寺の山門からまちなかにつながる坂道の途中にkymaの事務所はある

社長の土用下淳也さんは、先般亡くなられた五井建築研究所の西川英治会長の下で建築士として、 (福)佛子園や(公社)青年海外協力協会(JOCA)の拠点施設などの設計に取り組んでこられました。 そして今般、五井建築研究所のまち設計室を分社化し、kymaを立ち上げました。「ごちゃまぜ」のまちづくりを芯とし、「人間に対する深い洞察力」(故・西川会長の言葉)が現れた建築によって、ひと、地域に貢献できる企業を目指すとのことです。

                   佛子園のB’s行善寺の中庭

「生涯活躍のまち」づくりにおいては、ソフト(人)とハード(建物)が対立するものと捉えられがちで、前者をベースに考えるべきだといわれますが、建物のあり方がそのなかにいる人の心持を柔らかくし、交流を促すこともあります。 外を歩く人と中にいる人の目線を合わす、建物のなかの通路を行き交う人が少しだけ譲り合うくらいの幅にする、保育園の遊具を、踏み外したり、飛び降りたりしても大きな怪我をしないギリギリのところで組むなど、故・西川英治会長とともに土用下社長はじめkymaの社員による配慮が施された建物(ハード)が、そこを訪れる人々の心地よさ(ソフト)をつくり出しているのです。

               最近竣工した石川県小松市の平屋の住宅

kymaは自らが目指すものとして「多様性の抱合」「 地域性の尊重」「普通性の先へ」の3つを掲げています。「多様性の抱合」とは、 人の行動や考え方は様々であるというところからスタートし、異なるものを分け隔てるのではなく、抱き合わせることによって、新たな出会いを生み、豊かな人間関係を育てていくようにすること、「地域性の尊重」 とは、そこに住む人となりだけではなく、その人が日々の生活を営む地域の歴史や文化、コミュニティから滲み出るその土地の空気にも敬意を払うこと、「普通性の先へ」とは、奇抜なアイデアや斬新な趣向を前面に出さずとも、 当たり前だと思われることや既成の概念を深く掘り下げ、柔軟な発想を通してこれまでの日常をさらなる高みへと導いていくこと。

               文化住宅を改修したJOCA大阪の事務所

「『ごちゃまぜ』とは『人々が混ざり合う中で相互に関わり合い刺激し合う関係性を創り出し、それまで体験し得なかったような共感性を互いに呼び起こすことで、前向きに生きようとする心の様態を醸成することである』」という故・西川会長の遺志を継ぎ、障害や疾病の有無や年齢差に関わらず、地域の誰もが集うことができる建築・まちづくりに今後もkymaは取り組んでいくでしょう。

”kyma”とはギリシャ語で「波」という意味。水面に波紋が広がっていく様に、
同社の設計する「ごちゃまぜ」の建物とコミュニティを全国で増やしていくべく当協議会もkymaと連携してまいります。